心理検査② IQ(知能)だけが検査ではない

発達の問題に気づくタイミングは、ご家庭によって様々です。乳幼児検査で指摘されることもありますが、もう少し大きくなって親御さんが子どもと関わる際、違和感や悩みが生じてから、あるいは、園や学校の先生からの指摘で気づかされることも多々あります。そのときになって「発達が気になる」などの情報をネット検索しはじめると「遅れ」や「障害」のワードを目にすることも多く、不安にかられることでしょう。そのような言葉を受け止め理解し、支援に活かしていくのは、簡単なことではありません。そのためにも、出来る限り早期に、しっかりとした検査と専門家の支援を受けることが大切です。

日本では一般的に、1歳になるまでに数回、1歳半、3歳の時に乳幼児検診が実施されています。検診では、身体測定の他に「運動発達の遅れ」や「言葉の遅れ」などの発達も確認されます。地域差もありますが、発達に詳しい医師や保健師が担当している場合は、1歳半の時点で「知的障害」がある程度把握され、「自閉症スペクトラム症」も1歳半で気づかれることが大半です。ただ最近問題になっている「境界知能」は気づかれない場合もあるようです。

このように1歳半の時点で、発達の遅れに気づくことがあるわけですが、この段階では、親の方がピンときていないことが多いとも言われます。もちろん乳幼児期の発達には個人差もあります。ただし、いずれ追いつくだろう、という風に考えるよりも「発達が気になる」と指摘されたり、少しでも親御さんに気になることがあったりすれば、保健センターなどでフォローアップを受けることが重要です。発達専門医によると、実際は、親の方で「特に問題ない」と判断し、繋がらない場合も多いと言われています。

親が現時点で、「問題ないだろう」「今はそこまで必要ないだろう」と判断するのではなく、「支援が必要そうであれば、まずは受けてみる」という姿勢で臨むことがポイントです。

子どもの「発達特性」を見ていく上で、必要な検査についてお話しします。

「心理検査」と表現しましたが、「心理検査」は「発達」、「知能」、「人格」、「認知機能」、「心理状態」の検査の総称です。検査は、「知能(IQ)検査」だけでなく、検査方法にも様々あることを知っておくといいでしょう。検査に際しては、専門家が「検査バッテリー」というものを組んで、お子様に必要な検査の組み合わせを提案してくれます。多様な観点で「特性」を把握することが大切です。ここでは、「発達」と「知能」に絞って記述します。


■発達検査

「運動」「身辺自立」「言語」などの領域別に発達の状態を測定します。測定する領域は、検査により多少異なるので、何が必要なのかを専門家と相談しながら実施するといいでしょう。検査方法も質問による聞き取りだけのものを選択すれば、他の検査が困難な児童でも発達診断をすることが可能です。各領域が「『同年齢において典型的と考えられる行動や反応』とどの程度合致しているのか」ということを、指数やプロフィール図などで知ることができます。

検査には以下のようなモノがあります。

①遠城寺式乳幼児分析的発達検査
②デンバー発達判定法(DENVER Ⅱ)
③新版K式発達検査2020
④乳幼児精神発達診断法(津守・稲毛式)
⑤KIDS乳幼児発達スケール


■知能検査
もっともよく行われている検査です。検査が行える年齢であるかがポイントになりますが、知的障害と発達障害は深い関連があるため「心理検査」あるいは「発達検査」という名目で「知能検査」がしばしば実施されています。

知的障害のあるグループでは、自閉症スペクトラム症の特性を持つ人が多いと言われています。理由はわかっていませんが、知的障害と発達障害はしばしば併存する深い関係でもあります。従って、どちらかの疑いでも知能検査が行われますし、検査でわかる指標は発達・知的両方の支援に有効です。子どもに困りごとがある場合は、「知的障害」と「発達障害」の両方の可能性を考慮し、支援をしていくことを考えなければなりません。

知能検査としては以下の2つが広く利用されています。

①田中ビネー知能検査V
②ウエクスラー式知能検査(子どもの場合は「WPPSI-III」「WISC-V」)

WPPSI-III:2歳6ヶ月から7歳7ヶ月, WISC-V 5歳0ヶ月から16歳11ヶ月

知能検査では知能指数(いわゆる「IQ」)を測定します。知的障害(知的発達症)の診断では、「偏差IQ」を参照します。偏差IQとは、平均を100として標準とするもので、平均との差で数値を考えていきます。

「知能」というと、「学力」と強い関連付けて考えがちで、「高い」か「低い」かで決まるように思われがちですが、「診断」については、各種検査と診察により総合的に考えるため、「IQ」の高低だけで判断されるものではありません。IQは知的機能の目安であり、DSM(診断基準)の最新版では、IQは記載されていません。それ以上に、「適応機能」が注目されています。

「適応機能」とは自分の所属するコミュニティで自立した行動・責任を果たす行動ができるかどうか、ということです。IQが低ければ、「知的」に問題と一般に捉えられますが、社会生活に問題ないのであれば、「障害」にならないこともあります。逆にIQが高くても、社会生活に著しく問題がある場合は、「障害」と捉える可能性も出てくるわけです。

学力は高いけれど、「適応機能」に問題があるケースも最近よく耳にします。
学力に結びつく知能以外の評価も今後大切になっていくでしょう。


ちなみに、「適応機能」を測る検査には以下のものがあります。

① S-M社会生活能力調査第3版
② 日本版ヴァインランドⅡ適応行動尺度


以下も参考してみてください。

知能検査ではわからない、大切な能力

心理検査① 子どもの特性をしることはネガティヴなことではありません。

知的障害なのか?発達障害なのか?その問いは必要なのか。


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