【海外教育レポート】鉛筆が持てない5歳児たち―イギリスの現状から考える「環境」と「子どもの発達」
皆様、こんにちは。GIERI(ギフティッド国際教育研究センター)です。 本日は、イギリスの教育現場で現在起きている、ある深刻な問題について取り上げたいと思います。先日、英フィナンシャル・タイムズ紙やニューズウィーク誌でも報じられましたが、イングランドにおいて 「基本的な生活スキルを持たずに小学校に入学する5歳児」 が急増しています。 鉛筆やフォークを持てない、1人でトイレに行けない、自分の名前がわからない。 こうした「スクール・レディ(就学準備)」が整っていない子どもたちの背景には、個人の発達の遅れという言葉では片付けられない、現代社会特有の環境要因と格差の問題が潜んでいます。 「スクール・レディ」を阻む現代の環境要因 イギリス政府は、2028年までに5歳児の75%を「スクール・レディ」の状態にするという目標を掲げています。しかし、研究財団Nestaの最新データによると、現状その基準を満たしているのは全体の68.3%にとどまっています。 なぜ、基本的な動作が身についていない子どもが増えているのでしょうか。 現地の教育現場からは、以下の2つの大きな要因が指摘されています。 テクノロジーの台頭と「座りっぱなし」の遊び スマートフォンやタブレットを使った遊びが増え、体を使って遊ぶ機会が減少しています。画面をスワイプするだけでは、鉛筆やカトラリーを扱うための「指先の微細運動(ファインモーター・スキル)」や体幹は育ちません。 家庭環境と所得格差 低所得家庭では、知育玩具の不足や、食卓でナイフやフォークを使う習慣そのものがないケースも少なくありません。無償給食を受ける低所得家庭の子どもがスクール・レディを満たす割合は51%であり、それ以外の家庭の72%と比べ、深刻な分断が起きています。 現在、イギリスの一部の学校では、休み時間後に「音楽に合わせて粘土をこねる」時間を設け、子どもたちの指先の力と器用さを養うという直接的なアプローチが行われています。 【動画】子供にナイフとフォークの使い方を教える動画 格差を乗り越える「ハックニー」の成功モデル この問題は絶望的なものではありません。ロンドン東部のハックニー区は、貧困層が多い地域でありながら、所得によるスクール・レディの格差をわずか「3%」に抑え込んでいます。 成功の鍵は、 「行政・学校・家庭が一体となった強力な支援ネットワーク...