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ギフテッド・2Eの視点から読み解く「スマホ依存」の背景と支援ー精神科の視点ー

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こんにちは、GIERI(ギフティッド国際教育研究センター)代表の石川大貴です。 現代の子どもたちを取り巻く環境において、スマートフォンやインターネットとの付き合い方は避けて通れない課題です。 今回は、東京都立松沢病院の稲熊徳也医師による研修「『スマホ依存』精神科でどうみる?」からの学びを、ギフテッド・2E(Twice-Exceptional)の専門家としての視点を交えてまとめました。 1. スマホ依存は「意志の弱さ」ではない 研修において最も重要なメッセージの一つは、スマホ依存は本人の性格やわがままではなく、脳の報酬系回路とブレーキ役である前頭前野の発達のアンバランスによって引き起こされる「コントロールの障害」であるという点です。 これは、ギフテッドや2Eの子どもたちを理解する上でも非常に共鳴する視点です。彼らは知的な理解力が高い一方で、感情や自己統制の機能が非同期的に発達していることが多くあります。10代の未熟な前頭前野に対し、終わりのない動画の自動再生や、ランダムに報酬が得られるガチャなどのアプリ設計は、強烈な刺激として働き、使いすぎを構造的に強化してしまいます。 2. 「感情調節」のツールとしてのスマホ 研修では、アプリの種類によって利用する心理的背景が異なると指摘されています。 ゲーム: やりこんで、落ち込みや自信のなさを紛らわす 動画: 考えなくてよい受動的刺激を見続け、不安を鎮める SNS: 繋がりを求め、孤独を和らげる ギフテッド・2Eの子どもたちは、その鋭敏な感受性(過度激動:OE)ゆえに、学校生活で「浮きこぼれ」を感じたり、周囲とのコミュニケーションに孤独を抱えたりしがちです。また、ADHDやASDといった発達特性を併せ持つ場合、いじめや叱責による自信喪失などから二次的な障害を抱えやすくなります。彼らにとってスマホやネットの世界は、現実世界のつらさを回避し、いつでもどこでもアクセスできる「手軽な感情調節手段」となっているのです。 3. 家庭と支援者ができる「環境調整」 「スマホを取り上げれば解決する」わけではありません。研修でも、スマホやWi-Fiを強制的に取り上げることは、かえって親子関係を悪化させ、暴力に発展するリスクがあると警告されています。 私たち大人がすべきことは、行動を責めるのではなく、その背景にある「つらさ」や「孤独感」に目を...

「普通になりたい」という悲鳴が問いかけるもの:京大生自死の報道と、ギフテッド・2E支援の深い死角

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こんにちは。ギフティッド国際教育研究センターの石川です。 先日、知人より新聞の写真が突然送られてきました。 京都大学理学部に現役合格したものの、レポート提出などが困難で単位が取得できず、自ら命を絶ってしまった2年生の男子学生の報道記事が掲載されていました(「息子なぜ命断った」『毎日新聞』2026年9月8日)。 高い知的能力を持ちながらも、実行機能の凹みにより大学生活で行き詰まり、医療機関の診断待ちという支援の空白期間に孤立を深めていった彼の「俺は普通になりたかった」という言葉に、胸が締め付けられる思いがします。 GIERI(ギフティッド国際教育研究センター)にも、これと極めて類似したケースのご相談が多数あります。私はこの痛ましい出来事の背景に、現在の日本社会における「ギフテッド支援のいい加減さと無理解」が横たわっていると強く感じています。 「輝かしい成功譚」という生存者バイアス 学校や社会への不適応をきっかけに検査を受け、IQの高さが確認される。日本においてギフテッドの特性が発覚する典型的なルートです。しかし、問題児だと思っていた我が子が高IQだと分かった途端、親や周囲は「何とか上手い方法を見つければ、学業面での成功が収められるのではないか」と過剰な期待を抱いてしまいます。 巷には、「元ギフテッドチャイルド(現ギフテッド)」を自称する若者や一部の支援者による、「塾で先取り学習をしたらうまくいった」「進学校に行ったら環境が合って成功した」という魅力的な言説が溢れています。彼らの言葉は嘘ではないでしょう。しかし、これは極めて危険な「生存者バイアス」です。社会は、目を向けたい輝かしい才能の成功譚だけを消費したがります。 現実のGIERIの相談現場では、誰もが羨む進学校に進みながらも、全くうまくいかず苦しんでいるケースが山のようにあります。「高IQであること」「高学歴という社会的な成功を収めること」「才能を活かして社会でうまく生きていくこと」——これらは、全く別の次元の話なのです。 「普通」の呪縛と、学歴の罠 「普通になりたい」。高学歴の彼らはよくそう口にします。しかし、彼らが思い描く「普通」とは、良い学校を出て、良い就職をし、あるいは起業して成功するといった、現代社会が作り上げた極めてハードルの高いサクセスモデルに過ぎません。 彼らは、ささやかな自分に合った人生や幸せとは...

弁証法的行動療法について、わかりやすく、具体的に教えて?

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前回のパーソナリティ症に関わるBlog「パーソナリティ症研修(2026年夏)からの新たな学び:2E支援における「家族のケア」と「変化のステージ」」を公開したところ、「弁証法的行動療法」についての質問がありました。 私自身も林先生の研修を受ける中で知ったものですので、その療法の実践者でも専門家でもありませんが、わかりやすく、研修の資料や学びからまとめさせていただきました。 是非参考にしてください。 弁証法的行動療法(DBT)は、激しい感情の波や衝動的な行動をコントロールし、より良い人生を送るためのスキルを学ぶ認知行動療法の一つです。Linehanらによって開発され、主に以下の4つの具体的な技能(スキル)を訓練するものです。 4つの基本スキルと具体例  ■マインドフルネス(現実的で冷静な自己観察・現実認識の技能) 内容: 湧き上がる感情や判断に捉われることなく、今起きている事象をありのままに見て受け入れる(アクセプタンスする)スキルです。 具体例: 怒りを感じた時、「ダメだ」と否定したり相手にぶつけたりせず、「私は今、怒りを感じている」と客観的に実況中継するように観察します。腹式呼吸などの身体技法や瞑想もここに含まれます。  ■苦しみに耐える技能(苦痛耐性) 内容: 危機的な状況や強い苦痛をすぐに解決できない時に、衝動的な行動で事態を悪化させることなく、その状況を安全にやり過ごすスキルです。 具体例: パニックになりそうな時に氷を握りしめて感覚を逸らしたり、行動を起こす前に「60秒ルール」を用いて立ち止まって考えたりすることで、自傷行為などを防ぎます。  ■感情コントロール技能(感情調節) 内容: 感情の波を穏やかにし、極端な気分の変動に振り回されないようにするスキルです。 具体例: 睡眠や食事を整えて感情の土台を安定させることや、強い悲しみがある時にあえて外に出て散歩するなど、感情と反対の行動をとって気分を切り替える練習をします。  ■役に立つ対人関係技能(対人関係の有効性) 内容: 自分の自尊心を保ちながら、他者と良好な関係を築き、自分の要求や断りを適切に伝えるスキルです。 具体例: 相手を攻撃したり自分を過度に卑下したりせず、「私はこうしてほしい」と冷静に要望を伝えたり、罪悪感を持たずに「NO」と断ったりするコミュニケーションの練習を行い...

パーソナリティ症研修(2026年夏)からの新たな学び:2E支援における「家族のケア」と「変化のステージ」

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こんにちは。ギフティッド国際教育研究センター(GIERI)です。 先日、西ヶ原病院の林直樹先生を講師にお迎えした「パーソナリティ症(障害)の基本的理解と実際の対応」に関する精神保健福祉研修(2026年度前期)に今年も参加してまいりました。 昨年ブログでは、診断が「タイプ分類」から「ディメンション(次元)」へと移行している点や、ギフティッドの過度激動(OE)を「治療して消す」のではなく「特性のグラデーション」として捉えることの重要性についてお伝えしました。 是非、以下のBlogもご覧ください。 「パーソナリティ」をどう捉えるか?—最新の精神医学から見る『個性』と『障害』の境界線 でまとめました。 今回の研修では、本人が行き詰った際の「変化のステージ(動機付け)」と「支える側のサポート・介入」というより、周囲の環境やプロセスのに踏み込んだ内容が強調されていましたので、この新たな2つの視点を中心に、ギフティッド・2E支援への応用について紐解いていきたいと思います。 1. 当事者が変わらない理由:「変化のステージ」を見極める 支援や教育の現場で、「本人の行動がなかなか変わらない」「支援を拒否される」という壁にぶつかることは少なくありません。 研修では、Prochaska & Diclementeの「変化のステージ」モデルが紹介されました 。人は行動を変える際、 「熟考前 ⇒ 熟考 ⇒ 準備 ⇒ 行動 ⇒ 持続」というプロセスを辿ります 。 2E(二重に特異な)の子どもたちが、学校生活や対人関係で行き詰まり、強い不適応(ひきこもりや問題行動など)を起こしているとき、大人は焦って「行動」や「準備」の段階を求めがちです。 しかし、本人がまだ問題を自覚していない「熟考前」の段階にいる場合、実質的な治療や対策は機能しません 。 研修資料でも「前半のステージでは、対応はできるが治療はできない。動機づけが焦点となる」と指摘されていました。 2E支援においても、まずは本人の苦悩や世界観を否定せずに共有し、「このままでは生きづらいかもしれない」という自己観察(セルフモニタリング)を促すための「動機づけ」から丁寧に始める必要があります。 2. 家族の労苦に寄り添い、「境界線」を引くサポート 今回の研修で非常に大きなウエイトを占めていたのが、患者を支える家族の疲弊とそのサポートで...