【第5回】算数オリンピック級の頭脳なのにプリントが出せない? 優秀な親が陥る「実行機能のショート」の罠
「WISCの言語理解(VCI)は150台という非常に高い数値なのに、なぜ毎日たった1枚のプリントが出せないのでしょうか?」 「私学特有の同調圧力の中で、子供をどう守ればいいか分かりません」 GIERI(ギフティッド国際教育研究センター)のオンライン面談でこう語られたのは、外資系企業で最前線に立つ、非常に論理的で優秀なワーキングマザーでした。 息子である小学3年生のタイチ君(仮名)は、算数オリンピックに挑戦するほどのずば抜けた思考力を持っています。しかし、学校のプリント提出や明日の準備といった日常のタスクになると、途端に「めんどくさい」とフリーズし、何もできなくなってしまいます。 医療機関に行けば「発達障害(ADHD等)」と診断されそうですが、薬を飲ませるほどの違和感はなく、しかし学校生活の管理を親が肩代わりするのにも限界がきていました。 ■ 「F1のエンジン」と「軽自動車の足回り」 GIERIが面談で最初に行ったのは、医療モデル(障害)から「発達モデル(非同期)」へのパラダイムシフトです。 タイチ君は、ADHDの不注意という単純な話ではありません。彼は「F1マシンのエンジン(極めて高い認知能力)」を積んでいるにもかかわらず、「軽自動車の足回り(生活実行面)」しか備わっていないという、極端な「非同期発達」を起こしている状態なのです。 高度な抽象思考ができるがゆえに、単純作業の「めんどくささ」に脳のエネルギー配分がエラーを起こし、実行機能がショートしてしまっています。 ■ 優秀な親が陥る「過剰最適化」の罠 さらに、この事態を複雑にしていたのは、お母様自身の「管理設計能力の高さ」でした。 親がシステム思考に優れているため、子どもが失敗しないように先回りして「完璧な足場づくり(オーバー・スキャッフホールディング)」をしてしまっていたのです。 優秀な親が仕組みを作りすぎると、子どもはそれを「自分ごと」として捉えられなくなり、ますます実行機能を働かせる機会を失います。 ■ 「完璧な管理者」から「共同研究者」へ GIERIからの客観的なコンサルティングを受け、お母様は大きな気づきを得られました。 「息子を発達障害やADHDとして見るよりも、『高い認知能力と生活実行面の非同期発達』として理解する方が自然だと腑に落ちました」 「親が先回りして正解を作るのではなく、少し不完全でも本人...