PTSD:トラウマ体験が原因なのか?
私たちは物事を因果関係で考えるように設計されています。そうすることが「合理的」であるという信念をもって社会制度も設計され、そのような仕組みで生きることが心地よいと考えられます。特に「ASD」領域の方々は、その合理性に安心感をもち、論理立ててあることに執着し、そうであるはずだ!という想い込みが人一倍強いように思われます。
悪いことが起きれば、何か原因があるはずだ!
「それは、○○だ!」
皆さんはどう思いますか?
(そのような不安を解消するために「神話」が作られました)
そのような因果に固執しがちなタイプなら、現実は必ずしもそうでないということを知っておく必要があるでしょう。
「辛い体験の記憶が心理的な症状を生み出す」という因果論は正しいのか。そんな研究が複数行われています。
例えば、ニュージーランドの研究者は5歳から9歳までの間に転落により怪我をした子どもたちと転落経験のない子どもたちとの比較を研究しました。
次のABどちらのグループが18歳時点で、「高所恐怖症」になったでしょうか?
A「子ども時代の転落事故経験者」
B「子ども時代に転落事故未経験者」
結果は
18歳の時点で強い高所恐怖症をもつ割合は、転落経験者では2%、転落未経験者は7%。仮説とは異なり、転落経験者の方が高所恐怖症になりにくいということでした。
なぜこんなことになるか。「転落事故→高所恐怖症」ではなく、もともと「高所で不安を感じないから、転落を経験をしている」という複雑な因果関係がなりたつからです。トラウマ的な体験が「高所恐怖症」の原因なのではなく、本来のパーソナリティのほうが「恐怖症」の原因になっているということがわかってきています。
PTSDとトラウマ体験の関係についても、次のようなことがわかってきています。
アメリカの調査では、90%の人生で潜在的トラウマ体験(例:幼少期の両親との別れ、虐待、離婚死別、不安障害やうつ等)に遭遇し、その8.3%が人生のどこかでPTSDを発症すると言われています。裏を返せば、トラウマ的な体験は、10人中9人にPTSDを発症させることがないということです。
トラウマ的な体験が、PTSDの原因ではないのかもしれません。
近年ではトラウマ体験をしやすいパーソナリティが分析されており、Big5でいうところの外向性と内向性の高さが原因と考えられています。
トラウマ体験がPTSDを引き起こすのではなく、トラウマ体験を引き起こしやすいパーソナリティーが原因であるのならば、自身のパーソナリティを知ることで、トラウマ的な経験にどのように対処し、PTSDの発症にそなえることもできるでしょう。
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