日本で発達障害が増えている?その意味が示すモノ

小中学生の8.8%に「発達障害」の可能性あり。(文科省調査 2022年12月)

この数値に基づけば、1クラスに3人程度、「発達の問題のある子どもがいる」ことになります。21世紀に入り、発達障害者支援法のもと発達障害への支援を拡充してきたにもかかわらず、「特別支援級」や「通級(支援教室)」ではなく、「通常学級(普通級)」に発達の問題がある生徒が8.8%いると、先生たちが考えており、その数は調査をする度に増え続けています(前回調査は6.5%(2012))。

もちろんこの結果は、発達障害の「可能性」の話であり、必ずしも「発達障害者の児童数」ではないことを文科省は繰り返し説明をしています。しかしながら、「障害者数」でなくても、特別支援を用いなけらば対応できない数の子どもたちが現場に増え続けている日本の教育現場の事実に留意しなければなりません。

実際の「発達障害者数(診断数)」はどうでしょうか。

同じく文科省の調査(令和2年度 通級による指導実施状況調査結果)によれば、2006年の時点で、発達障害者数のは全国で7000人足らずでした。しかし、そこから14年後の2020年には、発達障害者の数は9万人を越えました。数字だけで見れば、この14年間で発達障害者数は14倍に増えました。

少子化で子どもが減る中で、発達障害者の子どもの数も、発達の可能性のある子どもの数も増え続けていることになります。

その理由はいくつか考えられます。

一つは自閉症の疫学研究を踏まえると、昔は見逃されていた知的障害がないタイプの自閉スペクトラム症が、見つかりやすくなってきているためかもしれません。そのため、専門家からすれば、驚く数ではないという人も多数います。

政府の支援施策により、発達障害に対する理解や認識が進んできたことも一つの要因と言えるでしょう。
以前は「なんとなく手のかかる子」程度と考えていたことが、「発達障害」という認知がすすんだことで、実際に相談や受診をする児童が増えました。また、福祉サービスの充実に伴い、診断をもらうことへメリットを感じる人が増えたからかもしれません。

また、そもそも子どもたちの多くは医学的診断基準を基づく「発達障害」ではなく、発達障害の状態を示している「発達障害もどき」であるという意見もありますし、誤診・過剰診断が増えているのではないかという指摘もあります。

しかしながら、最も大切なことは、「発達障害」の診断の有無に関係なく、「発達特性」やそれに不随する問題から不適応を起こしている子どもの数が劇的に増えており、その数は全体の10パーセントに及んでいるという事実が日本にあると言うことです。しかも、その数は今のところ減りそうにないという現実を受け止めなければなりません。

発達障害の数が劇的に増えているお話をしましたが、このような発達の問題をもつ子どもたちの多くが不登校になると言われています。発達障害が本当に「障害」になるのは、その特性が不適応を起こし、二次障害をもたらすときです。

小中学校における不登校児童生徒数が29万9048人(前年度は24万4940人)となり、前年度比で22.1%増加し、約30万人不登校の児童数が約30万人に登ると発表されました(尚「ひきこもり」146万人)。ある研究グループの報告によると、幼児期に自閉スペクトラム症と診断された人たちの23.5%が小中高校のどこかの期間に、文部科学省が定義する不登校の状態になっており、知的障害の伴わない人に限ると30.6%でした。

文部科学省の令和3年度の調査によると、不登校の小学生は1.3%、中学生は5.0%だそうです。前述の研究データを合わせて考えると、不登校になった人たちの中では、発達障害の特性を持っている人たちがかなり高い割合を占めると思われます。

現在の日本の不登校、さらにはひきこもりを含め、社会にあわない「特性」をもつ人たちが1割はおり、その人たちがどのようにすれば、その「特性」を活かすことができるのかを真剣に考えていかなければなりません。

発達障害の数がしばしば指摘されますが、発達障害者数の増加は日本だけではありません。世界的に増えています。先ほども書いたように研究の成果や認知の広まりが影響しているかもしれません。
特に、アメリカでは日本以上の増加が見られ、しばしば誤診や過剰診断の問題が指摘されています。

しかし、数の増加を懸念するよりも大切なことは「障害」を「特性」と捉え、さらに「才能」として認め合う社会であるかどうかということ。そのことが、私たちが未来を考える上でもっと重要なことです。

ニューロダイバシティ時代にあっては、そもそも発達障害と言われる特性は、「発達多様性」と呼ぶべきものです。ベンチャー起業の多くがADHDであったり、研究者がASDであったという例は数多く存在し、歴史を振り返れば人類の進歩をもたらしてきました。

ニューロダイバシティーの考えは、「発達障害」やそれに類する状態を単なる障害や欠陥ではなく、むしろ個々の人々の固有の特性や能力の一部であるという考えに基づきます。つまり、脳の多様性は社会的に価値のあるものであり、それぞれの個人がその違いを尊重されなければなりません。

そのような観点で支援が行われ、教育が作られ、社会を形成していくことが発達障害の問題に取り組む上で重要です。その点に関して、私たちは、同質的な一斉管理型の教育を是とするのでなく、新しい多様性の教育を学ぶことで、真に「個別最適化」が何であるかを知る必要があるでしょう。

本来、子どもの発達や成長というものは、一様ではありません。各人の発達のプロセスは、それぞれ違いがあって、発達の違いとは個人差があります。発達障害の問題が取り沙汰されたことは、同時に「定型発達」(標準)であることへの信仰がうまれ、「非定型」であることを「障害」にし、誤解を恐れずに申せば、障害を探すことに専門家の労力がさかれてしまっています。

私たちがすべきことは「非定型」であることを「才能」にし、少しでも幸福な人生を歩むことを手助けすることです。

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