「“根拠のない自信”ってどう育てるの?」—親子の信頼関係と子どもの自己肯定感を考える—
心理学者エリク・エリクソンは、人生を8つの段階に分けて発達課題を整理しました。その最初の段階である「乳児期」の課題は、「基本的信頼(ベーシック・トラスト)」の獲得です。これは、端的に言えば「人を信じる力」と「自分を信じる力」が一体となって育つプロセスです。
赤ちゃんは、最初に母親との関係を通じて「この人は自分を見てくれている」と感じます。それがやがて他人にも拡がり、自分自身を信じる感覚へとつながっていく。この一連の流れが「基本的信頼」なのです。お母さんが子どもをしっかり見守ることが原点なのです。
子どもに伝える最も大切なもの
それは、「あなたは、あなたでいていい」というメッセージです。
よく聞く「根拠のない自信」って、何ですか?
脳科学者の茂木健一郎さんや精神科医の斎藤環さんが、「根拠のない自信」という言葉を使って、自己肯定感の重要性を語っているのを耳にします。これは「勉強ができるから自信がある」といった実績に裏打ちされた自信ではなく、「自分は存在しているだけで価値がある」と思える感覚のことです。
これはまさにエリクソンの言う「基本的信頼」にほかなりません。大人から無条件に受け入れられ、愛された経験が、自分の存在に対する確信につながるのです。
勉強やスポーツ、音楽のスキルなど大人の評価に裏付けられた「根拠のある自信」ももちろん大切でしょう。しかし、そこだけに依存すると、必ず壁にぶつかります。なぜなら、自分より優れた誰かには必ず出会うからです。成長していくと嫌でも、必ず、評価と競争の社会に巻き込まれていきます。だからといって、子どもたちに早い段階から、大人の根拠を自身と結びつてはいけません。
なぜなら「根拠のある自信」しか持っていないと、自分より成績の優れた他者に出会ったときに、劣等感に圧倒されてしまい、自己価値を見失いかねないからです。どんな子どもでも、必ず自分より根拠を持った優れた人と出会うのです。「根拠のない自信」が育っていないと他人を見下したり、仲間を傷つけることで自分の優越感を保とうとしてしまうのです。
一方で、根拠のない自信=基本的信頼が育っている子どもは、自分に自信があるからこそ、他者の優れた部分に素直に「すごいね」と言えます。これは、他人と自分を比べるのではなく、尊敬し学びたいと思える気持ちの表れです。大人の価値観で人を評価しない子ども時代を過ごすことが大切なのです。
このような土台があると、健全な人間関係が築かれ、学びへの意欲も自然と育っていきます。
愛着の不全が、成長とともに社会不適応や引きこもりにつながるケースも指摘されます。「自分は誰からも必要とされていない」「信じても裏切られる」――そうした感覚は、早期の愛着体験と深く関係していると言われます。
他者から十分に愛されているのだという感覚が、社会の中で安心して生きていく力の根っこになります。
子どもに「信じる力」を育てるために、親にできること
基本的信頼や愛着は、親子関係の中で「繰り返しの安心体験」を通して育ちます。
・約束を守る
・子どもの気持ちに耳を傾ける
・できたことより、存在そのものを認める
・失敗しても「大丈夫」と伝える
こうした日々の小さな関わりの積み重ねが、「根拠のない自信」を育む土台となります。
今、子どもたちは成績や成果で評価される「根拠のある自信」を求められがちです。しかし、どれほどの成果を積んでも、それだけでは心は安定しません。
それ以上に成果を積んでいる人に必ず出会うからです。
だからこそ必要なのが、「あなたは、あなたでいていい」というメッセージです。
それを言葉と態度で伝える大人が、ひとりでも増えること。それが、子どもたちの未来を支える力になると私は信じています。
本当の自己肯定感を育むために「根拠のない自信を育てる」ことを目指しましょう!
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