「親が変われば、子どもは変わる」 ―ひきこもり経験者の父・市川さんが語る、家族としての向き合い方―

「親が変われば、子どもは変わる」 ―ひきこもり経験者の父・市川さんが語る、家族としての向き合い方―

インタビュアー:ギフティッド国際教育研究センター代表 石川大貴
語り手:楽の会リーラ 理事長 市川乙允さん


「娘の不登校」が、すべての始まりでした

――市川さんがこの活動に関わるようになった原点を、教えていただけますか?

市川さん:
2001年、私の娘が中学1年のときに不登校になりました。そこから約20年以上、親として、また支援者として、ずっと「ひきこもり」と向き合ってきました。

当時、妻が「隠すのではなく、オープンにしよう」と周囲に助けを求めたことで、地域の方や親戚に支えられたんです。その経験が、今の私たちの原点です。

娘はその後、自分でイタリアの農業体験プログラムを見つけ、参加しました。文化も言語も違う世界で、娘は大きく変わりました。今では母となり、働きながら子どもを育てています。

「親のあり方」が、子どもに伝わってしまう

――娘さんの経験が、お孫さんにもつながっているそうですね。

市川さん:
はい、娘の子どもも中学で不登校になりました。でも、娘自身がかつて不登校だったことが、良い対応につながりました。「学校に行かなくてもいいよ」と、受け入れる姿勢が最初からあったんですね。

実は、この子(孫娘)は「自分で選んだ道を進む子」なんです。ある通信制の高校を選び、やがては大学へ。そこでゼミのリーダーまで務め、卒業後は社会に出ていきました。

――「自分で選んだ」「自分で決めた」ということが、大きかったのでしょうか?

市川さん:
まさにそこです。親は、つい正解を教えたくなるけれど、それをぐっと堪えて、信じて待つことが大切なんです。


「偏見」ではなく「共感」で地域とつながる

――市川さんは、地域や職場で「オープン」にされてきたそうですね。

市川さん:
職場でも町内会でも、「うちには引きこもりの家族がいます」と正直に伝えてきました。最初は偏見もありましたよ。「引きこもりって嫌だよね」と言う人もいました。

でも、それを正面から受け止めて、言い続けていくと、いつの間にか新しい輪が広がるんです。「実はうちも…」と話してくれる人も現れる。偏見が溶けて、共感に変わっていく。

だから私は、親御さんにも言いたい。「隠さなくていいんです。助けを求めることは、弱さではなく、勇気なんです」と。


数字で見えてこない「ひきこもり」

――全国には146万人を超えるひきこもりの方がいると言われていますが、実際に相談に来られるのは1割にも満たないとか。

市川さん:
そうなんです。たとえば東京都北区では、5,000〜6,000人の方がいると推定されていますが、実際に相談に来るのは数十〜数百件ほど。

つまり、多くの方が「家族だけでなんとかしよう」と思って、誰にも相談できずにいます。これは親自身の偏見や、世間の目を気にする気持ちが壁になっているのです。


「親子断絶」の先にあるもの

――一番つらいご相談は、どんなものですか?

市川さん:
親が強引に引き出し屋を使ってしまって、子どもが「親に裏切られた」と感じてしまうケースですね。

本人から「助けてほしい」と電話がくることもあります。そういうときは、私たちが信頼するルートを通じて、弁護士や居住支援、生活保護などを組み合わせ、本人を守るための対応をします。

でも、その後に親子関係を修復するのは、本当に難しい。だからこそ、「無理に引き出す」よりも、「信頼関係を一歩ずつ取り戻す」道を選んでほしいんです。


家族として「何ができるか」ではなく、「どう関わるか」

――最近は「CRAFT」など、親子の関係性にアプローチするプログラムも導入されているとか。

市川さん:
CRAFTは、もともとアルコール依存症の家族向けに作られたもので、声かけの仕方や関係性の変化を丁寧に支えるプログラムです。私たちの団体でも昨年から導入しています。

暴力や暴言があっても、「なぜそうなったのか?」「どう声をかけたら良かったのか?」を、親子で具体的に振り返っていきます。

つまり、親が「変わる」ことで、子どもが少しずつ反応を変えていく。 これは本当に希望が持てる変化です。


最後に、ひきこもりに悩む親御さんにメッセージを

市川さん:
親御さんに伝えたいのは、「孤立しないで」ということです。家族会でも、カフェでも、居場所はあります。まずは一歩、誰かに話してみてください。

私たちが目指しているのは、「行きづらい地域」から「行きやすい地域」へ。そして、「隠す」から「ひらく」へ。

あなたの家族の経験が、いつか誰かの希望になります。どうか、あきらめないでください。


◎取材協力

NPO法人 楽の会リーラ
ひきこもりの当事者・家族による家族会/相談支援/ピアサポート・カフェ運営など
https://rakukai.com/

ギフティッド国際教育研究センター(GIERI) (代表:石川大貴)
https://gieri-jp.com/



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