【研修後記】「ゲームは悪?」発達支援のプロと見つめ直す、子どもの心との向き合い方
秋晴れの心地よい日差しの中、先日(10月6日)は府中市子ども発達支援センター「はばたき」様にお招きいただき、日々子どもたちに寄り添う相談員・指導員の皆様を対象に、「子どもをとりまくSNS関係やゲームの問題」というテーマで研修会をさせていただきました。
現代において、スマートフォンやゲームは子どもたちの生活と切っても切り離せない存在です。しかし、その一方で「わが子がゲームに没頭して心配」「どう関わればいいのか分からない」といった声が、保護者の方々からも、支援の現場からも数多く聞かれます。
今回の研修では、そうした切実な課題に対し、私たちがどのような視点を持つべきかをお話しさせていただきました。
「ゲームを長時間やると依存症になる」は本当か?
研修の冒頭で、私は参加者の皆様にいくつかの質問を投げかけました。
「ゲームを長時間やるとゲーム障害・依存症になる?」
「ゲームを止められないのは意志の弱さの問題?」
「不登校や引きこもりの原因はゲーム?」
これらは、多くの方が一度は抱いたことのある疑問かもしれません。しかし、これらはすべて「誤解」であるか、あるいは非常に単純化された見方です。
問題の本質は、「ゲーム=悪」と断じることでは見えてきません。大切なのは、なぜ子どもたちがそれほどまでにゲームの世界に惹きつけられるのか、その背景にある心のメカニズムを理解することです。
研修では、ゲームが脳の「報酬系」と呼ばれる部分を強く刺激し、ドーパミンを放出させることで強い快感や高揚感を生み出す仕組み(「デジタル・ヘロイン」とも呼ばれます)や、特に発達特性のあるお子さんが、その特性ゆえにゲームの世界に安心感や自己肯定感を見出しやすい側面について、脳科学的な知見を交えながら解説しました。
ゲームは、現実世界で満たされにくい「承認欲求」や「自己実現欲求」を代償的に満たしてくれる、強力な装置なのです。
だからこそ、私たちは「ゲームをすること」そのものを否定するのではなく、その背景にある子どもの心の渇きに目を向けなければなりません。
支援の最前線で戦う皆様からの「声」
研修後、参加された相談員の皆様から、心のこもった数多くのご感想をお寄せいただきました。(匿名化し内容をまとめると以下のようになります)
「ゲームやネット依存について誤解していたことが多かったな、と気づかされる研修でした。」
「ゲームの悪い面だけでなく、コミュニケーションツールになっていることなど、良い面も知ることができて視点が広がった。」
「ゲームがその子を支えてきた側面もあり、ゲームを否定することはその子自身を否定することにもなりかねないと知り、ゲームの使用の仕方や心配していることの伝え方はとても大切だと思った。」
「二次性発達障害の話はよく勉強になりました。身体的な不利益から話を始めることやゲーム自体を否定しない話なども実際に対応しているからこそ見えてくる観点だと感じました。」
「大人の側が“どんなゲームをしているのか”“子どもがどんな世界を体験しているのか”を知る姿勢をもつことも大切なのだと理解しました。」
皆様からの言葉一つひとつが、支援の最前線で真摯に子どもたちと向き合っておられることの証であり、私自身も深く学ばせていただく時間となりました。
心より感謝申し上げます。
私たちが明日からできること
ゲームとの付き合い方は、ご家庭にとっても、支援者にとっても、一つの「正解」があるわけではありません。
しかし、今回の研修と皆様からのご感想を通じて、私たちが進むべき方向性が見えてきます。
それは、一方的にルールを押し付けたり、ゲームを取り上げたりする「対立」の構図から抜け出すことです。そして、子どもが今どんな世界に夢中になっているのかに関心を持ち、「対話」を始めること。それが、複雑に見える問題を解きほぐす、最も確かな第一歩なのだと確信しています。
GIERI(ギフティッド国際教育研究センター)では、今後も子どもたちの健やかな発達を願い、保護者の皆様、そして支援者の皆様のお力になれるよう、知見を深め、発信を続けてまいります。
【GIERIからのお知らせ】
出張講演・研修会のご依頼 GIERIでは、今回のような発達支援機関様、教育委員会、学校法人様などを対象とした出張講演や研修会を承っております。テーマや内容については、ご要望に応じて柔軟にカスタマイズ可能です。
保護者様向けオンラインセミナー 「ゲームとの付き合い方」をはじめ、様々なテーマで保護者の皆様を対象としたオンラインセミナーを随時企画しております。開催情報は公式ブログやウェブサイトでご案内いたします。
個別相談 お子様の発達やゲーム・ネットとの関わりについて、代表の石川が個別にご相談を承ります。
ご興味をお持ちの方、ご相談をご希望の方は、お気軽にGIERI公式ウェブサイトよりお問い合わせください。
▼GIERI公式ブログもぜひご覧ください
https://gieri-jp.blogspot.com/
コメント
コメントを投稿