「才能」の前に、守るべきものがある―ギフテッド・2Eの子どもが発する「命のサイン」を見逃さないために
GIERI(ギフティッド国際教育研究センター)の石川です。
私たちのもとには、日々、ギフテッドや2E(Twice-Exceptional:二重の特別支援ニーズ)のお子さんを持つ親御さんから、多くの相談が寄せられます。
「学校に行かず、家でゲームばかりしている」
「やるべきことをやらず、甘えているだけではないか」
「もっとこの子の才能を伸ばすにはどうしたらいいか」
そうした教育熱心なご相談の中で、時折、私たちの背筋が凍るようなお話が出てくることがあります。 それは、お子さんにリストカットなどの自傷行為や、「消えたい」「死にたい」という言葉(希死念慮)が見られるにもかかわらず、親御さんがそれを「思春期特有の気を引く行為」「逃げているだけ」と捉え、重要視されていないケースです。
「才能を伸ばすこと」と「命を守ること」。 この優先順位を誤ると、取り返しのつかないことになります。
先日、私たちは武蔵野大学教授であり、自殺予防のスペシャリストである小高真美先生の講演を受講しました。その学びを共有し、今、苦しんでいるお子さんと、その才能を信じる親御さんに伝えたいことがあります。
1. 「甘え」ではなく「心理的視野狭窄」
不登校やひきこもり状態にあるお子さんに対し、「甘えている」「怠けている」と感じてしまうことがあるかもしれません。しかし、小高先生の講義によれば、死にたいとまで思い詰めている人の心理状態は、「心理的視野狭窄(しんりてきしやきょうさく)にあると言います
これは、「今の苦しみから逃れるには、もう死ぬ以外に選択肢がない」としか考えられない状態です
「やるべきことをしていない」のではなく、「生きるだけで精一杯」の状態なのです。これを「甘え」と断じて追い込むことは、孤立感を深め、リスクを高めることにつながります
2. 「リストカット」は最大の危険信号
「死ぬ気はないけれど、リストカットをしている」「死にたいと口にする子は、本当は死なない」
もしそう思われているとしたら、それは誤り(俗説)です
小高先生が示したデータによれば、自傷行為(リストカットなど)の経験者は、そうでない人に比べて、将来の自殺死亡リスクが「数百倍」に跳ね上がることが明らかになっています
ギフテッドの子どもたちは感受性が強く(過度激動)、絶望感を深く味わいやすい傾向があります。その腕の傷は、「かまってほしい」サインではなく、「限界を超えている」サインとして、最大限の危機感を持って受け止める必要があります。
3. 親ができる「ゲートキーパー」の役割
では、どうすればいいのでしょうか。 才能を伸ばすための塾や教材を探す前に、まずは「ゲートキーパー(命の門番)」としての役割を意識してください。
ポイントは以下の4つです
気づく:「いつもと違う」変化に気づく
。 声をかける・聴く:批判や判断をせず、じっくり話を聴く。「そんなの大したことない」「もっと頑張れ」という励ましはNGです
。 確認する:ここが重要です。「自殺について話すのは良くない(寝た子を起こす)」というのは誤解です
。小高先生は、「いま、死にたいと考えていますか?」と直接確認することを推奨しています 。聞くことは後押しにはならず、むしろ「話しても大丈夫なんだ」という安心感につながります 。 つなぐ:親だけで抱え込まず、専門機関に「確実に」つなぐこと
。
最後に:才能は「生きてこそ」
私たちGIERIは、お子さんの素晴らしい才能を誰よりも信じています。 しかし、才能は「健康な心と体」という土台があって初めて花開くものです。
もし、お子さんがリストカットをしていたり、「死にたい」と口にしていたりする場合、今は勉強や才能開発のアクセルを踏む時ではありません。まずは命の安全基地を作る時です。
「甘えている」と突き放すのではなく、「そこまで辛かったんだね」と、その苦しみの深さを認めることから始めてみませんか。 生きる力が戻れば、才能は必ずまた輝き出します。
【参考文献・資料】 本記事は、以下の研修および資料に基づき作成いたしました。
研修講師:小高 真美 先生(武蔵野大学 人間科学部社会福祉学科 教授/博士 社会福祉学)
参照資料:令和7年度精神保健福祉研修 資料『自殺対策の基礎知識と遺された人たち・支援者へのケア』
GIERIでは、お子様のギフテッド・2Eの特性理解だけでなく、メンタルヘルスを含めた包括的なご相談をお受けしています。ひとりで悩まず、ご連絡ください。
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