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5月, 2025の投稿を表示しています

「“根拠のない自信”ってどう育てるの?」—親子の信頼関係と子どもの自己肯定感を考える—

心理学者エリク・エリクソンは、人生を8つの段階に分けて発達課題を整理しました。その最初の段階である「乳児期」の課題は、「基本的信頼(ベーシック・トラスト)」の獲得です。これは、端的に言えば「人を信じる力」と「自分を信じる力」が一体となって育つプロセスです。 赤ちゃんは、最初に母親との関係を通じて「この人は自分を見てくれている」と感じます。それがやがて他人にも拡がり、自分自身を信じる感覚へとつながっていく。この一連の流れが「基本的信頼」なのです。 お母さんが子どもをしっかり見守ることが原点なのです。 子どもに伝える最も大切なもの それは、「あなたは、あなたでいていい」というメッセージです。 よく聞く「根拠のない自信」って、何ですか? 脳科学者の茂木健一郎さんや精神科医の斎藤環さんが、「根拠のない自信」という言葉を使って、自己肯定感の重要性を語っているのを耳にします。これは「勉強ができるから自信がある」といった実績に裏打ちされた自信ではなく、「自分は存在しているだけで価値がある」と思える感覚のことです。 これはまさにエリクソンの言う「基本的信頼」にほかなりません。大人から無条件に受け入れられ、愛された経験が、自分の存在に対する確信につながるのです。 勉強やスポーツ、音楽のスキルなど大人の評価に裏付けられた「根拠のある自信」ももちろん大切でしょう。しかし、そこだけに依存すると、必ず壁にぶつかります。なぜなら、自分より優れた誰かには必ず出会うからです。成長していくと嫌でも、必ず、評価と競争の社会に巻き込まれていきます。だからといって、子どもたちに早い段階から、大人の根拠を自身と結びつてはいけません。 なぜなら「根拠のある自信」しか持っていないと、自分より成績の優れた他者に出会ったときに、劣等感に圧倒されてしまい、自己価値を見失いかねないからです。どんな子どもでも、必ず自分より根拠を持った優れた人と出会うのです。「根拠のない自信」が育っていないと他人を見下したり、仲間を傷つけることで自分の優越感を保とうとしてしまうのです。 一方で、根拠のない自信=基本的信頼が育っている子どもは、自分に自信があるからこそ、他者の優れた部分に素直に「すごいね」と言えます。これは、他人と自分を比べるのではなく、尊敬し学びたいと思える気持ちの表れです。大人の価値観で人を評価しない子ど...

周りのお友達が助けてくれるから、「通常学級にいく」は正しい?

発達特性のあるお子様が、小学校入学に際して、仲の良いお友達が助けてくれるから、「通常学級」で大丈夫だと思います、と答える親御さんがいます。 現に、保育園や幼稚園で色々とお世話をしてもらっており、園でもうまくいっている場合が多く、そのような状況を学校でも期待するのでしょう。 周りの親御さんや、そのお友達にも直接、「入学してもヨロシクね」と声をかけている場面も見かけます。 入学後、うまくいくでしょうか? もし本当に周りに支援をしてもらい、支援無しでの学校生活が難しいのであれば、通常級の選択を私はおすすめしません。 幼少期のお友達関係は、いくら親御さんが仲良しでも、例え親類でも恒久的に維持されるものではありません。学校のクラス内の人間関係や力学、周りの個自身の成長ともに変わってくるものです。 不登校関係の相談で、よくきくのが、仲の良い友達と疎遠となった、というものです。お友達の支援を前提にするのであれば、様々な問題を引き起こすことになるでしょう。そして、運良く、小学生時代が過ごせたとしても、中学になるとさらに人間関係は変わります。小中高一貫校ですごしたとしても、大学ではバラバラになってしまいます。 仲の良いお世話をしてくれる友達なしでクラスで過ごせないというのは、とても不健全なことなのです。 通常学級で、助けられながら学校生活を送るということのプラス面を見るとすれば、それは本人以外のクラスの同級生です。人間には様々な障害や特性がありサポートが必要なことを知ることは、ニューロダイバシティー教育においてとても重要です。お世話する子には大変なメリットがあるでしょう。障害者のお世話をさせることで、子どもの気力を回復させるというプログラムもあるくらいです。 しかし、特性をもつ子ども自身には何もメリットはありません。幼いときに、同級生に助けられなければ学校生活を過ごせないということが、自尊感情を傷つけているかもしれません。また、周囲の親しい誰かに助けてもらうことが当然だと考えてしまうことが、その子の特性理解とできるとをできるようにする教育の機会を奪ってしまいかねません。 その子どもが成人になって、何をみにつけているべきか、それを逆算して考えるのが特別支援教育です。周りに助けてもらうことを前提にせず、自分のできるを増やすために、適切な教育環境を選択することが必要です。 ↓ 以下の記事も...