【研修報告】ひきこもり146万人の現実と、家族に求められる「安心の土台」づくり
GIERI代表の石川です。
11月26日(水)、多摩総合精神保健福祉センター主催の「ひきこもり支援研修」に参加いたしました。講師は、ひきこもり支援の第一人者であり、「オープンダイアローグ」の普及でも知られる筑波大学名誉教授・斎藤環先生です。
今回のブログでは、「ひきこもりの最新実態(統計)」と、支援の第一歩となる「家族の基本的心構え」について、GIERIとしての視点も交えながら共有します。
1. データで見る「ひきこもり」の現在地
まず、内閣府が2023年3月に公表した調査結果によると、ひきこもり状態にある人の推計は全国で約146万人にのぼります
ここで注目すべきは、その年齢層の広がりです。
15〜39歳:2.05%
40〜64歳:2.02% といずれの層でも約2%の出現率となっており、もはや「若者の問題」ではなく、全世代的な課題であることが数字からも明らかです
。
また、ひきこもりに至るきっかけも世代によって異なります。若年層(15-39歳)では「退職」「人間関係」「不登校」などが上位ですが、中高年層(40-69歳)では「退職したこと」が44.5%と圧倒的に多く、誰にとっても明日は我が身である現状が浮き彫りになっています
2. 深刻化する「高齢化」と家族の苦悩
研修では、斎藤先生が主宰する家族会(250名対象)のアンケート分析も共有されました。ここからは、いわゆる「8050問題(80代の親が50代の子を支える構図)」の深刻な実態が見えてきます。
本人の平均年齢:34.4歳
親の平均年齢:65.5歳
平均ひきこもり期間:155.4ヶ月(約13年)
このように長期化・高年齢化が進む中で、支えるご家族のメンタルヘルスも危機的な状況にあります。精神的健康度を測る「K6」という指標では、うつ病・不安障害などの精神疾患が疑われる「13点以上」のスコアを示した親御さんが**43.0%**にも達していました
3. 支援のゴールは「就労」ではなく「自律」
私たち支援者が、そしてご家族がまず共有すべきは、「ゴールの再定義」です。 斎藤先生は、学校や社会の価値観に従う「適応(就労・就学)」を目指すのではなく、本人が自分の内なる声に従えるようになる「自律」を目指すべきだと強調されました。
「自律」の結果として、自然と「適応」がついてくるのが本来の順序であり、最初から適応(就労)を求めると、かえって本人のエネルギーを奪ってしまいます
4. 今日からできる「家族の基本的心構え」
では、家庭で具体的にどう接すればよいのでしょうか。
ひきこもり状態にある本人の欲望(意欲)を回復させるためには、マズローの欲求段階説でいう「安全の保証(安全欲求)」と「他者との接点(関係欲求)」が不可欠です
研修資料の31枚目にまとめられた「家族の基本的心構え」は、私たちGIERIの支援方針とも強く共鳴するものです。
安心してひきこもれる関係づくり: まずは家を「安全基地」にする
。 「北風より太陽」: 無理に動かそうとせず、温かく見守る
。 禁句を避ける: 「怠け」「甘え」「わがまま」といった言葉は使わない
。 両親の一致団結: 夫婦で対応を統一し、本人が混乱しないようにする
。 「遠慮」の効能: 愛情を押し付けるのではなく、親切な他人(隣人)のような節度ある距離感を保つ
。 親もプライベートを楽しむ: 親自身が犠牲にならず、自分の人生を生きる姿を見せる
。
GIERIとしての決意
今回の研修を通じ、ひきこもり支援における「対話」と「伴走」の重要性を再確認しました。 GIERI(ギフティッド国際教育研究センター)では、ギフテッドや2E(Twice-Exceptional)の特性を持つ方々が、社会的な枠組みと合わずに孤立してしまうケースも多く扱っています。
「どうさせるか(適応)」ではなく「どうしたいか(自律)」を共に探すパートナーとして、引き続き専門性の高い支援を提供してまいります。
文責:GIERI代表
石川大貴
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