ひきこもり「変えようとしない」からこそ、人は変わる。―オープンダイアローグが教える「対話」の逆説

 【研修報告】ひきこもり支援の最前線 理論編

先日、多摩総合精神保健福祉センター主催の研修にて、筑波大学の斎藤環教授より「オープンダイアローグ(開かれた対話)」について学んでまいりました。 従来の支援現場では、「どうやって学校に戻すか」「どうやって就労させるか」という「解決」が優先されがちでした。しかし、斎藤先生が提示されたのは、それとは真逆のアプローチです。

1. 「説得」は対話ではない

私たちが良かれと思って行う「アドバイス」「励まし」「説得」。これらは対話ではなく、実は「独り言(モノローグ)」に過ぎないと斎藤先生は指摘します専門家や親が「正しい結論」を先に持ち、そこに相手を誘導しようとする時、当事者の言葉は力を失います。「働け」「学校へ行け」という正論は、彼らのエネルギーを奪うだけなのです


2. ゴールは「解決」ではなく「対話の継続」

オープンダイアローグにおいて、最も衝撃的だったのは「目的を持たない」という点です。 「治そう」「変えよう」とする意図を手放し、ただ目の前の相手の言葉に耳を傾け、主観と主観を交換し合う。ゴールは「対話が続くこと」そのものです

ここに究極の逆説があります。 「相手を変えようとしない努力をした結果、勝手に変化が起きてしまう」 ゴール(就労や復学)を忘れて対話のプロセスに没頭した時、当事者は安心感を得て、自らの力で「自律」への道を歩み始めます。


3. 「ポリフォニー(多声性)」の余白

支援の場では、全員の意見が一致する「ハーモニー」を目指す必要はありません。むしろ、バラバラな意見が共存する「ポリフォニー(多声性)」の状態が重要です。 「お母さんはこう思う」「支援者はこう感じる」「本人はこう言っている」。それぞれの声が否定されずにそこに在る時、その「余白」の中で、本人は自分自身の本当の願いを発見していくのです。


GIERIが目指すのも、社会への無理な「適応」ではなく、本人が内なる声に従う「自律」です。今回の学びを、今後のギフテッド・2E支援の現場でも深く活かしてまいります。

以下に続く

【研修報告】オープンダイアローグ実演から学ぶ 実践編(ロールプレイ編)


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