【特集】「発達に特性のある子どもが、自分らしく学べる国 カナダ ①

 「この子に本当に合う環境ってどこ?」
――カナダで見つけた“わが子らしさ”を守る場所

※本記事は、2025年現在カナダで発達特性のあるお子さんを育てながら留学支援を行っている保護者へのインタビューに基づいて構成しています。
教育制度や支援体制は州・学校・時期によって異なる場合があります。あくまで一つの実体験・主観に基づく内容としてご参照ください。

「日本の学校では、うちの子が“普通じゃない”って、毎日のように言われていたんです。」

そう語ってくれたのは、現在カナダの私立校に息子さんを留学させているAさん。発達障害とギフテッドの特性を併せ持つ息子さんの子育てに、長年悩み苦しみながらも、“この子が安心して過ごせる場所”を見つけたひとりの母親です。

最初は、国内の特別支援やフリースクールを検討していたそうですが、どこか「居心地の悪さ」「制度の限界」を感じていたといいます。

「この子の得意は“型にはまらないこと”なのに、日本の教育は“型に入れること”が前提なんですよね」

そんななかで出会ったのが、カナダの教育事情。特に私立校は、学力や成績よりも「その子自身がどんな環境で力を発揮できるか」を第一に考えてくれる文化があるという話を耳にし、強く心を動かされたそうです。

実際、現在息子さんが通う学校では、次のような“オーダーメイドの支援”が当たり前のように提供されています。

  • プレゼンが苦手なら、先生との一対一での発表に切り替え可能

  • ストレスによる遅刻や欠席は、診断に基づいて正式に配慮対象に

  • グループディスカッションが難しい場合は、レポート提出で代替可

こうした柔軟な対応は、決して「特別扱い」ではなく、「学びに必要な調整」として捉えられています。

「日本だと、“特別な配慮をお願いしてすみません”って気持ちになっていた。でも、カナダでは“どうすれば力を発揮できるか一緒に考えましょう”という姿勢なんです」

息子さんは今、プレッシャーや評価への恐れから解放され、安心して“学ぶ楽しさ”を取り戻しているといいます。


Aさんの言葉は、こう締めくくられていました。

「この子が“自分のままでいい”って思える場所にたどり着けて、本当に良かったと思います」

発達に特性のある子どもにとって、“合う環境”があるかどうかは、ただの選択肢ではなく、「その子の人生を支える土台」なのかもしれません。


「公立と私立、何が違うの?」
―支援が“制度”じゃなく“人”で決まるカナダの教育

「公立でも学費がかかるなら、私立と何が違うんですか?」

多くの親御さんが最初に抱く疑問です。カナダの公立学校は一見“安価”に見えますが、実際は留学生には年間80万〜100万円以上の学費が発生し、決して格安ではありません。

それ以上に大きいのは、“支援の質”の違い。

公立学校は原則としてカナダ国籍の子どもたちのための制度。留学生には手厚い特別支援や個別配慮が保証されているわけではなく、通う地域や校長、担任の裁量によって対応が大きく変わります。

一方、私立校では、「成果を出さなければ選ばれない」という意識が強く、留学生であっても、特性に応じた支援体制が柔軟に整えられています。

Aさんの息子さんも、こうした制度の恩恵を受けています。

  • パニックにならないようプレゼンは1対1形式

  • 神経過敏で朝の登校が難しい日は“合理的な遅刻”として扱われる

  • 周囲との衝突を避けるための個別学習ブースも利用可能

「『先生に言いづらい』『理解されないかもしれない』という不安がない。本人が“話していいんだ”と思える環境は大きいです」

Aさんは、支援の差を“制度の差”ではなく“文化の違い”と感じています。
「困っている子に合わせて教え方を変えるのは当然」という価値観が、教育現場に根づいているのです。


ギフテッド認定と飛び級って?」
―“早すぎる子”のための教育のかたち

「うちの子、みんなと同じ授業がつまらないみたいで…」

そう感じたことがある方は、カナダの“ギフテッド教育”に可能性を感じるかもしれません。

オンタリオ州では小学2年生の段階で認知検査を行い、成績上位の子にはギフテッドプログラムの選択肢が提示されます。
とはいえ、Aさんの息子さんは外国人留学生であったため、この公的な認定制度は利用できませんでした。

それでも、私立校では教員が本人の学力や思考力を見て判断し、本人の意欲と特性に合わせて「どんどん進めてOK」という柔軟な対応をしてくれたといいます。

実際、Aさんの息子さんは中学の段階で高校課程の数学を学び、大学レベルの演習課題にも挑戦
ただし、「飛び級」には注意点もあります。

  • 情緒面やソーシャルスキルにギャップが生じる可能性

  • 同年代との関係性の難しさ

それを補うために、学校側はメンタル面のサポートや、ピアサポート(仲介役の同級生)なども積極的に導入してくれたそうです。

「“進みたがる子”にブレーキをかけず、“育ち”をサポートしてくれる姿勢がありがたかったです」

 


※この連載は、カナダで発達に特性のあるお子さんを育てながら、実際に留学を経験・支援している複数の保護者の声をもとに再構成しています。内容は個人の見解や2025年時点の状況を含むため、実際の制度や支援内容は地域・時期・学校によって異なる場合があります。
最新情報については、弊社までお気軽にお問い合わせください。

コチラも参考に↓
「発達に特性のある子どもが、自分らしく学べる国 カナダ ②
「発達に特性のある子どもが、自分らしく学べる国 カナダ ③

■ お問い合せや相談 ■

Gifted International Education Research Institute

ギフティッド国際教育研究センター

HP:https://gieri-jp.com/

/////////////////////////////////////////




コメント

このブログの人気の投稿

「子育てジャーナル」のすすめ

心理検査② IQ(知能)だけが検査ではない

子どもの発達を考える「クリニック・病院」でできること