【特集】「発達に特性のある子どもが、自分らしく学べる国 カナダ ②

 「この子に本当に合う環境ってどこ?」

――カナダで見つけた“わが子らしさ”を守る場所

※本記事は、2025年現在カナダで発達特性のあるお子さんを育てながら留学支援を行っている保護者へのインタビューに基づいて構成しています。
教育制度や支援体制は州・学校・時期によって異なる場合があります。あくまで一つの実体験・主観に基づく内容としてご参照ください。

「親子で行ける!カナダ留学ビザの現実と注意点」

「子どもだけで行かせるのは不安…」

そう感じるご家庭にとって、“親子留学”という形は大きな希望になります。

カナダでは、保護者が現地のカレッジに就学することで、“留学生”としてのステータスを得られます。その結果、子どもは現地の公立校に無料で通学可能となる制度が用意されています(州により条件あり)。

Aさんも当初はこの制度を使うことを検討していました。しかし、最終的に私立校を選んだ理由は、「支援の質」と「本人の特性に合う環境」が優先だったからです。

制度利用の注意点:

  • 保護者が通うのは語学学校ではなく職業訓練カレッジなどに限られる

  • 子どもの学費が無料になるのは原則公立校のみ(私立は有料)

  • ビザ更新・住居契約・保険加入など、事務手続きが多い

「親が“行ってあげる”のではなく、“一緒に暮らしをつくる”感覚でした」

母子で留学することで、子どもだけでなく親自身も“安心できる”生活を築けることが、Aさんにとっては大きな意味があったといいます。


「英語ができなくても大丈夫?」

―語学の壁とサポート体制

「英語が苦手だけど、本当に大丈夫なんでしょうか…?」

結論から言えば、本人が安心して過ごせる環境さえあれば、英語力は自然に伸びます

Aさんの息子さんは、来加当初、英語での表現に大きな不安を抱えていました。読み書きも、話すこともハードルが高く、緘黙傾向が見られたほどです。

それでも、学校側の対応は非常に柔軟でした。

  • 文章提出→動画や音声録音でも可

  • 発表→1対1または録画発表で対応

  • わからない単語は辞書使用OK、時間延長あり

また、留学生向けにはESL(English as a Second Language)プログラムが用意されており、段階的に授業に参加していくことも可能です。

「“英語が完璧じゃない子”が当たり前にいる国。だから、恥ずかしいとか、劣等感を持たせないんです」

語学力の成長を急がず、まずは心を安心させる。それが結果的に、学力もコミュニケーション力も引き出すというのがカナダ流です。

英語が苦手でも、“帰国後の大学入試”で勝てる?」―英検と海外経験の強み

「うちの子、英語全然できないんです。留学ってそんな子でも意味ありますか?」

こうした不安をもつご家庭は少なくありません。でもAさんは、そんな子こそ「意味がある」と強く言います。

というのも、実際に彼女がサポートした生徒の中には、英検3級レベルで留学を始め、たった1年で準1級を取得した子もいるからです。

英語力が伸びる理由は単純です。

  • 言葉の“必要性”が日常生活にある

  • 学校側が“使える形”で教えてくれる

  • 失敗しても笑われない環境がある

特に、カナダの学校では「間違いは学びのチャンス」として歓迎されます。だから、完璧な英語を話せなくても、話してみようと思える。これが、語学を学ぶうえで決定的な差になります。

また、英語力だけでなく、帰国後の大学入試へのアドバンテージも無視できません。

現在、日本の多くの大学(特に私大)は「総合型選抜(旧AO入試)」や「帰国生入試」において、英検やTOEFLのスコアを評価基準に採用しています。加えて、

  • 自己推薦文での“海外経験”の活用

  • 英語面接でのアピール

  • ポートフォリオ提出による評価

など、多様な力を測る機会が設けられています。

「英語の点数だけじゃなく、“そこで何を感じて、何を考えたか”を語れる子が、本当に強いんです」

だからこそ、Aさんは「英語が苦手でも、大丈夫。でも“なぜ海外で学ぶのか”は、自分の中で持っていてほしい」と言います。

1年でもいい、半年でもいい。
「この環境で、自分らしく頑張れた」と言える経験は、帰国後の進路に確実に“武器”になるのです。


「子どもが“自分から行きたい”と思うには?」
―留学へのステップは“親の在り方”から

「子どもが『行きたい』と言わない限り、無理に留学させても意味がないですよね…?」

Aさんが関わってきた多くのご家庭から、同じような声を何度も聞いたといいます。

確かに、本人の納得と意思がなければ、どんなに環境が良くても、海外での生活はうまくいきません。
けれど一方で、Aさんはこうも語ります。

「“子どもが行きたいって言うまで待つ”という姿勢が、実は“子どもが何も動けなくなる”原因になっていることもあるんです」

というのも、発達に特性がある子どもたちは、「不安」や「失敗の記憶」が強く残りやすく、新しい環境に踏み出すまでに非常に時間がかかることがあります。

そのとき、親が「本人の気持ちが大事だから」と、ただ様子を見るだけだと、子どもは「このままでいいのかも」「自分には何もできない」という気持ちを強めてしまうことも。

ではどうすればいいのでしょうか?

Aさんが大切にしているのは、**「親が先に、希望に触れてみせること」**です。

たとえば…

  • 親だけで説明会に参加してみる

  • 「こんな学校もあるみたい」と話題に出してみる

  • 実際の学校の写真や動画を一緒に見る

これらは、子どもに「行かせよう」と説得するのではなく、**“一緒に考えるきっかけ”**をつくる行動です。

実際にカナダ留学を実現したご家庭の多くは、こんなステップをたどっています。

  1. 最初は親が「このままでいいのか」と悩みながら動き出す

  2. 数か月かけて情報収集や相談を重ねる

  3. 子どもがその姿を見て「じゃあ、ちょっと話聞いてみようかな」と反応

  4. 「試しに見学だけでも」という形で徐々に関心を持ち始める

  5. 体験授業やオンライン面談を通じて、“納得して決める”状態へ

「“親も迷っていい”と見せてくれる大人がいると、子どもも安心して決断できるようになるんです」

また、Aさんが印象に残っているご家庭では、普段は海外にまったく興味を示さなかった中学生の男の子が、母親が一人で学校見学に行ったあとに突然こう言ったそうです。

「お母さんが本気で調べてくれてるの、ちょっとかっこいいと思った」

Aさんは言います。

「親が“答えを出す人”ではなく、“一緒に模索する人”になったとき、子どもは自分の選択として前に進み始めます」

大切なのは、「行く・行かない」の前に、「話していい」「悩んでいい」という関係性を築くこと。

そして、海外留学というのは、“将来”の話ではなく、“今この子にとって楽になれる道かもしれない”という、目の前の選択肢であるということ――。

その選択肢を、親が先に“安全に触れてみせる”ことが、すべての出発点になるのです。



※この連載は、カナダで発達に特性のあるお子さんを育てながら、実際に留学を経験・支援している複数の保護者の声をもとに再構成しています。内容は個人の見解や2025年時点の状況を含むため、実際の制度や支援内容は地域・時期・学校によって異なる場合があります。

最新情報については、弊社までお気軽にお問い合わせください。


コチラも参考に↓
「発達に特性のある子どもが、自分らしく学べる国 カナダ ①

「発達に特性のある子どもが、自分らしく学べる国 カナダ ③


■ お問い合せや相談 ■

Gifted International Education Research Institute

ギフティッド国際教育研究センター

HP:https://gieri-jp.com/

/////////////////////////////////////////




コメント

このブログの人気の投稿

「子育てジャーナル」のすすめ

心理検査② IQ(知能)だけが検査ではない

子どもの発達を考える「クリニック・病院」でできること