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【研修報告】「依存」は「自己治療」かもしれない—ネット・ゲーム障害の背景と、GIERIが創る“リアルの没頭”

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こんにちは。GIERI(ギフティッド国際教育研究センター)代表の石川です。 年末年始に際し、これまでの研修での学びをBlogにまとめています。 本日は、昨年夏に参加した、独立行政法人国立病院機構久里浜医療センターの三原聡子先生による研修「思春期・青年期における問題行動:ネット依存・ゲーム障害等から回復するための支援」の参加報告をまとめました 。 久里浜医療センターといえば、WHO(世界保健機関)からも指定協力センターとして認定されている、依存症治療の最前線です。 今回の研修で得た知見は、私たちGIERIが日々向き合っているギフティッドや2E(Twice-Exceptional:発達特性を併せ持つギフティッド)の子どもたち、そして社会的な生きづらさを感じている若者への支援において、非常に示唆に富むものでした。 本日は、研修の学びと、そこから見えてきたGIERIの役割について共有したいと思います。 「楽しいから」だけではない、依存のメカニズム 一般的に、ゲームやネットへの没頭は「単なる快楽の追求」や「怠け」と捉えられがちです。しかし、専門的な見地からは、もっと切実なメカニズムが働いていることが解説されました。 一つは 「報酬欠乏症候群」 という概念です。特定の行動による強い刺激に脳が慣れてしまい、日常のささやかな幸せを感じられなくなる状態です 。 そしてもう一つ、私が特に重く受け止めたのが、 「自己治療としての依存(Self-Medication)」という視点 です 。 現実世界に「強いストレス」や「適応できない苦しさ」があるとき、人はその苦痛を和らげるための鎮痛剤として、ゲームやネットの世界に没入します。つまり、彼らにとってゲームは、過酷な現実を生き延びるための「松葉杖」の役割を果たしている可能性があるのです。 ギフティッド・2E児と「デジタルの親和性」 研修資料では、背景要因としてADHD(注意欠如・多動性障害)やASD(自閉スペクトラム症)の特性が挙げられていました 。 ADHD傾向: 衝動性のコントロールが難しく、現実での失敗経験から自己肯定感が下がり、ゲームへ逃げ込む 。 ASD傾向: 社会的なコミュニケーションの困難さや不安から、ネット上の明確なルールや関係性に居場所を求める 。 これは、GIERIに通うギフティッド・2Eの子どもたちにも深く通じる話です...

「パーソナリティ」をどう捉えるか?—最新の精神医学から見る『個性』と『障害』の境界線(研修参加報告)

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はじめに 令和6年、東京都中部総合精神保健福祉センター主催の研修「パーソナリティ症(障害)の基本的理解と実際の対応」に参加してまいりました 。 講師は、この分野の第一人者である西ヶ原病院の林直樹先生です 。 今回の研修では、パーソナリティ障害(以下、PD)の概念が近年「大刷新」されていること 、そしてそれが発達障害やトラウマ(複雑性PTSD)と深く関わっていることについて、非常に示唆に富むお話を伺いました。 私たちGIERIが日々向き合っている「ギフティッド」や「発達特性」を持つ子どもたちの支援にも通じる重要な視点がありましたので、GIERIならではの考察を交えてご報告します。 1. 「病気の分類」から「特性の度合い」へ(ディメンショナル・モデル) 最も大きな学びは、診断のパラダイムシフトです。 これまでPDといえば、「境界性」「自己愛性」といった『タイプ(カテゴリー)』に当てはめる診断が主流でした 。しかし、最新のDSM-5やICD-11では、 「ディメンション(次元)モデル」 への移行が進んでいます 。 これは、ある人を型に当てはめるのではなく、 「その特性(性格の傾向)がどの程度強いか」 を測定し、その上で 「自己機能や対人関係機能にどの程度の支障が出ているか」 を見るアプローチです 。 林先生は、PDの定義について以下の2点を強調されていました。 パーソナリティ機能の減損 (自分らしさの維持や、他者との共感・親密さに問題がある) 病的パーソナリティ特性 (否定的感情や、脱抑制、対立などの傾向が強い つまり、 「性格が偏っている=障害」ではなく、「その特性によって生きづらさ(機能障害)が生じているか」 が焦点となるのです。 2. 発達障害・トラウマとの深い重なり 私たちにとって特に重要だったのは、 「精神障害は重層する(重なる)」 という視点です 。 林先生は、PDの背景には、自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如多動症(ADHD)といった発達障害、あるいは虐待などの逆境体験による複雑性PTSD(CPTSD)が潜んでいることが多いと指摘されました 。 特に印象的だったのは、 「PDは発達障害の二次障害」 とも捉えられるという視点です 。 発達特性ゆえの生きづらさや、環境との不調和が積み重なった結果として、パーソナリティの問題として表面化しているケースは少なくあ...

【研修報告】「トラウマインフォームドケア(TIC)」を学ぶ:ギフティッド支援の現場から

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こんにちは、GIERIの石川です。 令和6年度精神保健福祉研修として開催された「トラウマについて理解し、支援に生かす」というテーマの研修に参加いたしました 。講師は、駒木野病院の笠原麻里先生です 。昨年は相談者が「トラウマ」について触れる機会が多く、改めて資料を読みBlogに重要なポイントをまとめました。 私たちGIERIが日々向き合っているギフティッドや発達に特性のある子どもたちは、その高い感受性ゆえに、環境からのストレスを深く受け止めてしまうことがあります。今回の研修は、そうした子どもたちの「生きづらさ」や「行動」を理解する上で、非常に重要な視点を与えてくれるものでした。 研修からの学びと、そこから見えてくるGIERIとしての支援のあり方について以下に共有します。 1. トラウマとは「出来事」ではなく「反応」である まず重要だったのは、トラウマ(心的外傷)の捉え方です。トラウマとは単に恐ろしい出来事そのものを指すのではなく、その人にとって「恐怖や不快感をもたらし続ける体験」であり、心と体に刻まれた傷であるということです 。 特に興味深かったのは、トラウマ反応が「自律神経系(交感神経・副交感神経)のバランス不全」として身体に現れるという点です 。 動悸や過呼吸といった身体の変化だけでなく、感情の制御困難や感覚過敏といった症状も、生き延びるために身体が必死に適応しようとした結果なのです 。 2. 「困った子」ではなく「困っている子」と捉え直す 研修の中で特にGIERIの活動と深くリンクしたのが、 「トラウマインフォームドケア(TIC) 」という概念です 。 これは、すべての人を対象に「トラウマの影響を理解した対応」を行うアプローチです 。 子どもが反抗したり、嘘をついたり、あるいは無気力になったりするとき、それは単なる「問題行動」ではなく、 「助けて」と言えない子どもなりのSOS(適応戦略) である可能性があります 。 TICの原則では、以下の視点の転換が求められます。 「何が問題なのか?(What's wrong with you?)」 と問うのではなく、 「何があったのか?(What happened to you?)」 と背景を理解する 。 「症状」ではなく「適応」、「病理」ではなく「レジリエンス(回復力)」に着目し、その子の強み(ストレングス)を...