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【カナダ留学・最新情報】多様な学びの選択肢:発達障害を持つお子様の海外教育という道

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カナダは、そのインクルーシブな教育制度で世界的に知られています。今回は、ギフテッド教育のみならず、発達に特性を持つお子様が、ご自身の能力を最大限に発揮できる環境を求めてカナダに留学された、あるご家族の事例をご紹介します。 慣れない地での第一歩:2週間にわたる迅速な診断と支援 アメリカ人のご主人様と日本人の奥様、そして息子さんの3人家族。ご夫婦は、お子様の将来を考え、より良い教育環境を求めてカナダへの移住を決意されました。息子さんは、カナダ・ブリティッシュコロンビア州バーナビーの公立校に通い始めましたが、入学からわずか2週間後、学校から「合理的配慮の対象となる可能性がある」との連絡を受けます。 カナダでは、教師が子どもの様子を注意深く観察し、言語の問題だけでなく、学習環境への適応に困難が見られる場合、専門家によるサポートを提案します。このご家庭の場合も、担任の先生と校長先生の判断で、心理テストを受けるよう勧められました。 日本では診断を受けるまでに時間がかかることも少なくありませんが、カナダでは早期発見・早期療育が重視されており、学校と医療機関、地域の専門家が連携して迅速に対応する体制が整っています。 カナダの手厚いサポート体制:経済的支援とインクルーシブ教育 診断の結果、息子さんは自閉症スペクトラム(ASD)とADHDの可能性が高いと診断されました。カナダ、特に ブリティッシュコロンビア州 では、ASDと診断された子どもを持つ家庭への手厚い補助金制度があります。 6歳未満の子供: 対象となるセラピーや療育サービスに対し、 年間最大22,000カナダドル の補助金が支給されます。 6歳から18歳の子供: 学校教育からのサポートに加え、 年間最大6,000カナダドル の補助金が支給されます。 この制度は、言語聴覚士、作業療法士による療育や、ライフスキル・ソーシャルスキルのプログラムなど、学校外での幅広いサービスに利用することができます。早期に診断を受け、適切な療育を始めることで、子どものコミュニケーション能力や社会性、学習スキル、生活能力の発達を促進することを目的としています。 このご家庭の事例は、海外の教育が、発達に特性を持つお子様にとって、新たな可能性を切り開く選択肢となりうることを示しています。GIERIでは、お子様一人ひとりの特性に合わせた留学の形をご提案し...

【研修後記】「ゲームは悪?」発達支援のプロと見つめ直す、子どもの心との向き合い方

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 秋晴れの心地よい日差しの中、先日(10月6日)は府中市子ども発達支援センター「はばたき」様にお招きいただき、日々子どもたちに寄り添う相談員・指導員の皆様を対象に 、 「子どもをとりまくSNS関係やゲームの問題」 というテーマで研修会をさせていただきました。 現代において、スマートフォンやゲームは子どもたちの生活と切っても切り離せない存在です。しかし、その一方で「わが子がゲームに没頭して心配」「どう関わればいいのか分からない」といった声が、保護者の方々からも、支援の現場からも数多く聞かれます。 今回の研修では、そうした切実な課題に対し、私たちがどのような視点を持つべきかをお話しさせていただきました。 「ゲームを長時間やると依存症になる」は本当か? 研修の冒頭で、私は参加者の皆様にいくつかの質問を投げかけました。 「ゲームを長時間やるとゲーム障害・依存症になる?」 「ゲームを止められないのは意志の弱さの問題?」 「不登校や引きこもりの原因はゲーム?」 これらは、多くの方が一度は抱いたことのある疑問かもしれません。しかし、これらはすべて「誤解」であるか、あるいは非常に単純化された見方です。 問題の本質は、「ゲーム=悪」と断じることでは見えてきません。大切なのは、なぜ子どもたちがそれほどまでにゲームの世界に惹きつけられるのか、その背景にある心のメカニズムを理解することです。 研修では、ゲームが脳の「報酬系」と呼ばれる部分を強く刺激し、ドーパミンを放出させることで強い快感や高揚感を生み出す仕組み(「デジタル・ヘロイン」とも呼ばれます)や、特に発達特性のあるお子さんが、その特性ゆえにゲームの世界に安心感や自己肯定感を見出しやすい側面について、脳科学的な知見を交えながら解説しました。 ゲームは、現実世界で満たされにくい「承認欲求」や「自己実現欲求」を代償的に満たしてくれる、強力な装置なのです。 だからこそ、 私たちは「ゲームをすること」そのものを否定するのではなく、その背景にある子どもの心の渇きに目を向けなければなりません。 支援の最前線で戦う皆様からの「声」 研修後、参加された相談員の皆様から、心のこもった数多くのご感想をお寄せいただきました。(匿名化し内容をまとめると以下のようになります) 「ゲームやネット依存について誤解していたことが多かったな、と気づかされる研修...

才能が翼を広げる場所:JALスカイ実習体験記✈️

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 GIERI(ギフティッド国際教育研究センター)では、特性を活かした社会経験の機会として、様々な企業様との実習プログラムを実施しています。今回は、空の玄関口である JALスカイ様 にご協力いただき、3日間にわたる実習を行いました。 実習生がどのように自身の特性と向き合い、職業体験を通じて成長のきっかけを掴んだのか、振り返りの面談記録からその様子をご紹介します。 緊張から楽しさへ:国際線と国内線での多様な業務体験 実習は、初日の 国際線ターミナル 、そして2日目・3日目の 国内線ターミナル で、多岐にわたる業務を体験させていただきました。 体験した業務は、以下の3つのカテゴリーに分けられます。 手先を使う軽作業 (備品作成、ビニール袋折り、ラミネートカットなど) PCを使った事務作業 (数字の転記、データ入力など) 外での作業 (備品補充、会議室清掃、拠点間の移動など) 特に印象的だったのは、実習生が「 手先が器用 」であるという国際線からの引継ぎ評価です。ビニール袋の折り方や、ハサミを使った作業において、丁寧さや正確さが評価されました。 国際線オフィスは、現場の音が聞こえる賑やかな環境。当初は戸惑いも予想されましたが、実習生からは「 苦手じゃなかった 」「 やってみたらそんなに気にならなくて、BGMのように流れていった 」という前向きな感想が聞かれました。 評価された「応用力」と「質問力」:PC作業での光る才能 国内線での PCを使った数字の転記作業 では、実習生の持つ高い能力が発揮されました。 担当の方からは、「マニュアル外の領収書に対しても、教えた基本を応用し、 自分で考えて 作業を進めることができた」と、その 応用力・思考力 が高く評価されました。加えて、「わからないことは しっかり質問できた 」点も、プロの仕事への向き合い方として称賛されました。 また、会議室の清掃では、清掃用具の使い方をしっかり確認し、 丁寧に 作業を実施するなど、一つ一つの業務に真摯に取り組む姿勢が見られました。 疲れよりも楽しさが勝る!ローテーション勤務への適性 3日間の実習は、国際線と国内線、そしてPC作業、軽作業、外回り作業と、 業務のローテーション が非常に多く、体力的にも精神的にも大きな変化がありました。 実習後、「帰ってからドッと疲れがきた」と話した実習生でしたが、「...

「東大卒なのに、なぜ…」元政策秘書の嘆きが暴く、日本のエリート教育の致命的な欠陥

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先日、私が民主党の議員秘書として駆け出しだった頃に大変お世話になった大先輩と、久しぶりに食事をする機会がありました。長年、政策秘書・秘書官として他党も含め政策立案の中枢を担い、霞が関の官僚たちと日々渡り合ってきた、私が最も尊敬する人物の一人です。 昔話に花が咲く中、私がギフテッド教育の必要性について語る中で、ふと先輩から問いかけられた一言が、私の心に深く突き刺さった。 「私は秘書を何十年とやってきたけど、永田町や霞が関で、東大出のエリート官僚を一度も『頭がいい』と思ったことが全くない」 それどころか「馬鹿だとしか思ったことがない」と話した上で、そうでないなら、戦略的に「馬鹿を演じている」のだと思うと話した。 日本の頭脳の頂点であり、最難関の試験を突破してきたはずの彼ら。その彼らが、なぜ政治の最前線で戦ってきたプロの目には「頭がいい」と映らないのか。その言葉の裏には、単なる個人の能力批判ではない、日本の社会システムが抱える根深く、そして極めて重要な問題が隠されていると考えられる。 「正解を出す天才」が「答えのない問題」に直面したとき 先輩が言うには、野党からの厳しい質問や、前例のない課題に直面したとき、多くのキャリア官僚は驚くほど機能不全に陥るというのです。 「彼らは用意された答弁書を読むのはうまい。でも、少し角度を変えた質問をすると、途端に『確認します』『分かりません』を繰り返す。むしろ、同じ部署に何十年もいるノンキャリアの課長の方が、よほど話が通じるし、問題の本質を理解している」 これは一体、何を意味するのか。 それは、日本の「メリトクラシー(能力主義)」が、 “ペーパーテストで高得点を取る能力”という、たった一つの物差しでエリートを選抜してきたことの限界 を示しています。 東大入試や国家公務員試験は、膨大な知識を記憶し、複雑な問題を論理的に解析し、決められた時間内に「唯一の正解」を導き出す能力を測るものです。この競争を勝ち抜いてきた彼らは、間違いなく「正解を探す」ことの天才です。 しかし、私たちが直面する現実の社会課題——少子高齢化、経済の再生、国際関係の再構築——に、 「唯一の正解」など存在するでしょうか? 先輩との会話で見えてきたのは、 「正解を出す能力」は極めて高い一方で、「正解のない問いを立て、多様な人々と対話し、全く新しい答えを創造する能力」が決定的に...

ギフテッドの事例に共通するもの

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以前 「ギフテッド育児の現実:親と教師が知っておきたい5つの物語」 を投稿したところ、事例の分析とどのようなサポートが望まれるかについてのご質問をいただきました。 5つの事例への専門的な分析やアドバイスは、各ブログの解説をご参考にしてください。 コチラも参考に↓ ギフテッドの親が直面する「困り感」詳細事例まとめ 2025年8月 5つの物語の事例解説は⬇ ギフテッドの事例:タクミくん(4歳)-突然の涙の理由 ギフテッドの事例:授業が退屈なケイ君(小学2年生・男子) ギフテッドの事例:仲間がいないアヤ(小学6年生・女子) ギフテッドの事例:制服の同調圧力に悩むミサキ(中2) ギフテッドの事例:限界に近づいた母 ここでは5つの事例に共通することについてお話しさせていただきます。 共通する重要なポイント 1. 早期の専門的介入 すべての事例において、ギフテッド教育や発達支援の専門家による評価とサポートプランの策定が必要です。 2. 学校との積極的連携 教育現場の理解促進と個別支援体制の構築が不可欠です。 3. 保護者のエンパワーメント 保護者自身が子どもの特性を理解し、適切な支援スキルを身につけることが重要です。 4. 社会的ネットワークの構築 同様の特性を持つ子どもたちや理解ある大人とのコミュニティ形成が、アイデンティティ形成と自己肯定感向上に重要な役割を果たします。 5. 継続的モニタリング ギフテッド児の発達は複雑で非線形的なため、定期的な評価と支援計画の見直しが必要です。 まとめ 各事例に共通して見られるのは、 非同期発達 (認知能力と社会情緒的発達のアンバランス)と 過敏性 (感覚的・情緒的な反応の強さ)という、ギフテッド児の特徴的な発達パターンです。 特に注目すべきは、これらの子どもたちが示している「問題行動」の多くが、実際には彼らの高い認知能力や感受性から生じる自然な反応であるということです。適切な理解と支援があれば、これらの特性は大きな強みとなり得ます。 保護者の皆さんには、まず専門機関での包括的なアセスメントを受けることを強くお勧めします。そして何より、 お子さんの特性を「問題」としてではなく、「異なる学習スタイルと発達パターンを持つ個性」 として捉えていただければと思います。 ※事例は、実際の「傾向」や「違和感」の情報を参考に、 ...

ギフテッドの事例:限界に近づいた母

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以前 「ギフテッド育児の現実:親と教師が知っておきたい5つの物語」 を投稿したところ、事例の分析とどのようなサポートが望まれるかについてのご質問をいただきました。 5つの事例に沿って、解説をしてみたいと存じます。実際の個別の事例については様々な要因が複雑にからみあっていますので、必ずしもご自身のお子様にあてはまるわけではありません。お子様の最適な才能を伸ばす際の参考にしてみてください。 限界に近づいた母・美香さん 美香さんの息子(小学3年)さんは、学校での成績はとても優秀です。しかし、苦手な漢字練習になると机を震わせ、紙を破り、泣き叫びます。 漢字テストもそれなりの点数をとるので、学校に相談しても「個性ですね」と軽く流れ、周囲に話しても「贅沢な悩み」と言われるばかり。   ある晩、ついに 「もうやめて!、いい加減にして!」と大声で怒鳴ってしまった自分に、強い罪悪感と涙がこぼれました。 翌朝 、息子が笑顔で「ママ、昨日の続きしようや」って言ったとき、美香さんは彼を抱き締めながら、二人に合った道を探そうと思いました 。   専門的分析 美香さんの状況は caregiver burnout(介護者燃え尽き症候群) の兆候を示しています。ギフテッド児の育児は特有の困難があり、周囲の理解不足がさらなるストレスを生んでいます。息子の行動は 非同期発達(Asynchronous development) の典型で、認知的能力と情緒的・運動的発達のギャップが学習困難を引き起こしています。 保護者・教育者へのアドバイス 即座に必要なサポート: 専門機関への相談 :発達支援センター、教育相談所での包括的アセスメント 学習方法の個別化 :視覚的・体感覚的学習法の導入(砂文字、粘土での文字作り等) 感情調整スキルの教授 :息子への怒りのコントロール方法教育 母親自身のケア: ペアレント・サポートグループ :同じような困難を抱える保護者との交流 レスパイトケア :一時的に子育てから離れる時間の確保 専門カウンセリング :ギフテッド児育児に理解のあるカウンセラーとの面談 長期的支援体制: 学校との継続的連携 :特別支援教育の枠組みでの支援検討 マルチモーダル学習の導入 :複数の感覚を使った学習法の開発 家族全体のウェルビーイング :家族療...

世界で学ぶ、異文化を越えて働く⑤スペイン編 非言語のコミュニケーションと誇り

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 いま、子どもたちに必要なのは「英語」よりも、 多様な価値観を受けとめる力──つまり「異文化のまなざし」です。 本連載では、国際ビジネス、教育、地域開発などの現場で40年以上にわたり、 五大陸・88か国を実地に歩いてきたGIERIの国際教育アドバイザー・栂野久登(とがのひさと)氏が、現場で肌で感じ、対話し、乗り越えてきた「文化を越えて働く」リアルな知見を語ります。 単なる“海外体験”ではありません。 言葉・習慣・価値観のズレに直面しながら、どう人と関係を築き、 どう「違い」を教育やビジネスの力に変えてきたか── スペインの街角で出会ったのは、 「自分の文化を誇る力」でした。 カタルーニャの人々は、言語も、芸術も、祭りも、 小さな子どもにまで誇りをもって語り継ぎます。 「自分は何者か」を胸を張って言えること。 それは、グローバル社会を生きる上での最強の土台です。 あなたのお子さんは、 「自分の大切なもの」を語れていますか? #異文化教育 #スペイン体験 #カタルーニャ文化 #子育てのヒント #自己肯定感を育てる #世界で学ぶ #国際教育 #親子で学ぶ #文化の誇り #教育エッセイ スペイン――非言語のコミュニケーションと誇り スペインは、私にとって「沈黙が雄弁である」ことを教えてくれた国でした。 言葉で語るよりも、表情や身振り、沈黙そのものに意味を込める。その非言語的な豊かさに触れるたび、日本的な「察し」とも似て非なる世界に驚かされました。 交渉の場での沈黙 あるとき、バルセロナの代理店との交渉で、私が数字を並べて合理的な提案をした後、彼らはしばし沈黙しました。私は焦って言葉を継ぎ足しましたが、彼らはただじっとこちらを見つめている。 やがて一人がゆっくりと口を開きました。 「あなたの言うことは理解した。だが、それが我々の“誇り”にどう関わるのか?」 その瞬間、私は悟りました。彼らにとって契約とは、単なる数字の取り引きではなく、自分たちの存在意義を尊重してもらえるかどうかの証だったのです。沈黙は「考えている」のサインであり、同時に「こちらの本音を見せろ」という圧力でもありました。 サグラダ・ファミリアが語るもの バルセロナの街を歩くと、未完の大聖堂サグラダ・ファミリアがそびえ立っています。何十年、何百年かかろうとも「完成」を信じて積み上げ続ける...