世界で学ぶ、異文化を越えて働く⑤スペイン編 非言語のコミュニケーションと誇り
いま、子どもたちに必要なのは「英語」よりも、
多様な価値観を受けとめる力──つまり「異文化のまなざし」です。
本連載では、国際ビジネス、教育、地域開発などの現場で40年以上にわたり、
五大陸・88か国を実地に歩いてきたGIERIの国際教育アドバイザー・栂野久登(とがのひさと)氏が、現場で肌で感じ、対話し、乗り越えてきた「文化を越えて働く」リアルな知見を語ります。
単なる“海外体験”ではありません。
言葉・習慣・価値観のズレに直面しながら、どう人と関係を築き、
どう「違い」を教育やビジネスの力に変えてきたか──
スペインの街角で出会ったのは、
「自分の文化を誇る力」でした。
カタルーニャの人々は、言語も、芸術も、祭りも、
小さな子どもにまで誇りをもって語り継ぎます。
「自分は何者か」を胸を張って言えること。
それは、グローバル社会を生きる上での最強の土台です。
あなたのお子さんは、
「自分の大切なもの」を語れていますか?
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スペイン――非言語のコミュニケーションと誇り
スペインは、私にとって「沈黙が雄弁である」ことを教えてくれた国でした。
言葉で語るよりも、表情や身振り、沈黙そのものに意味を込める。その非言語的な豊かさに触れるたび、日本的な「察し」とも似て非なる世界に驚かされました。
交渉の場での沈黙
あるとき、バルセロナの代理店との交渉で、私が数字を並べて合理的な提案をした後、彼らはしばし沈黙しました。私は焦って言葉を継ぎ足しましたが、彼らはただじっとこちらを見つめている。
やがて一人がゆっくりと口を開きました。
「あなたの言うことは理解した。だが、それが我々の“誇り”にどう関わるのか?」
その瞬間、私は悟りました。彼らにとって契約とは、単なる数字の取り引きではなく、自分たちの存在意義を尊重してもらえるかどうかの証だったのです。沈黙は「考えている」のサインであり、同時に「こちらの本音を見せろ」という圧力でもありました。
サグラダ・ファミリアが語るもの
バルセロナの街を歩くと、未完の大聖堂サグラダ・ファミリアがそびえ立っています。何十年、何百年かかろうとも「完成」を信じて積み上げ続ける姿勢は、まさにカタルーニャの人々の誇りの象徴でした。
「終わりのない建築」に込められたのは、経済的合理性ではなく、「我々はここにいる」という存在証明。言葉にせずとも、石のひとつひとつにそのメッセージが宿っていました。
日常の中の“空気を読む”力
スペイン人との会話では、声のトーンや間合い、視線がとても大切です。ある夕食会で、私が相手の冗談に対して笑いそびれた瞬間、場の空気が冷えたことがありました。その後、隣に座っていた友人が小声で教えてくれました。
「今のは笑うタイミングだったんだ。意味よりも、場の流れを大切にするんだよ。」
この体験から、私は「言葉を超えた共感」の重要さを学びました。彼らにとって会話とは情報交換ではなく、「関係性を温める儀式」だったのです。
読者へのメッセージ
スペインで得た教訓は、「言葉にならないものを感じ取る力」です。
私たちは教育現場で「言葉による説明」ばかりを重視しがちですが、子ども同士の関係性や親子のやり取りには、表情や間合いが大きな役割を果たしています。
子どもが言葉にできない思いを抱えているとき、無理に問いただすのではなく、沈黙や視線の奥にある気持ちを汲み取ろうとすること。それが「本当のコミュニケーション」を育む第一歩です。
スペインの人々のように、沈黙を恐れず、非言語に込められた誇りや感情を尊重すること。それを私たちが実践できれば、家庭も学校も、より深い信頼関係に包まれるはずです。
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