世界で学ぶ異文化を越えて働く④ドイツ編 合理性と規律が築く社会の信頼
いま、子どもたちに必要なのは「英語」よりも、
多様な価値観を受けとめる力──つまり「異文化のまなざし」です。
本連載では、国際ビジネス、教育、地域開発などの現場で40年以上にわたり、
五大陸・88か国を実地に歩いてきたGIERIの国際教育アドバイザー・栂野久登(とがのひさと)氏が、現場で肌で感じ、対話し、乗り越えてきた「文化を越えて働く」リアルな知見を語ります。
単なる“海外体験”ではありません。
言葉・習慣・価値観のズレに直面しながら、どう人と関係を築き、
どう「違い」を教育やビジネスの力に変えてきたか──
ドイツで学んだのは、「違いを議論し、共に生きる力」でした。
意見が対立しても、逃げずに語り合う。
立場や考えが異なっても、互いを尊重し合う。
その姿勢は、家庭でも教育でも欠かせないものです。
子どもが意見を言ったとき、
私たちは本気で耳を傾けているでしょうか。
違いを恐れず、話し合えること。
そこから「共存共栄」の未来は始まります。
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第5章 ドイツ――合理性と規律が築く社会の信頼
ブラジルが「人間としての情熱」を教えてくれた国だとすれば、ドイツは私に**「社会のルールと信頼」**について教えてくれた国でした。
一見、冷たく厳格に映るドイツ人のふるまい。しかしその根底には、「人間同士が安心して共に生きるための合理的な哲学」が確かに息づいていました。
窓ガラスをめぐる忠告
ある日、私のフラットに見知らぬ来訪者が訪れ、開口一番こう言いました。
「あなたは窓ガラスを掃除していますか?」
私は少し驚きながらも答えました。
「年末の大掃除で、年に一度ピカピカにしていますが……」
すると彼は眉をひそめ、諭すように言いました。
「ここドイツでは、多くの家庭が週に一度は窓を掃除します。窓は外から見ても常に光っているのが常識です。もし曇った窓を放置すれば、住人はだらしのない社会人と見なされ、軽蔑されることもありますよ」
私は面食らいながらも、「見ず知らずの私へご親切な忠告をありがとうございます」と答えるしかありませんでした。
彼らにとって「窓」は単なるガラスではなく、社会の一員としての姿勢を映す鏡だったのです。
犬は吠えない――公共空間の哲学
別の日、街角で出会った大きなジャーマンシェパードの大人しさに感心し、飼い主にたずねました。
「こんなに立派な犬なのに、吠えることはないのですか?」
飼い主は私を一瞥してから静かに尋ねました。
「あなたはドイツに来てどのくらいですか?」
「半年ほどです」と答えると、彼はこう続けました。
「日本では犬が公共の場で吠えることがあるのですか? こちらでは周囲に迷惑をかけぬよう、多くの飼い主が子犬のうちに声帯手術を施すと聞いています」
その徹底ぶりに、私は言葉を失いました。彼らにとって「公共の静けさ」は守るべき価値であり、個の自由さえ制限してでも維持すべき社会のルールなのです。
ビジネスの現場で学んだ「合理性」
この合理性は、ビジネスの場でも徹底していました。
私の任務は全欧州の販売チャネルの合理化。その交渉では、ラテン系代理店とドイツ本部との間で大きな対立が生じました。
ポルトガルやスペイン、イタリアの代理店は「永年の付き合い」を重んじ、コスト削減の議論からは目をそらします。人間関係が契約以上の価値を持っていたのです。
一方で、ドイツ本部の責任者は首尾一貫してこう言いました。
「余計なチャネルやコストは排除する。すべては事実と証拠。約束したことは必ず守る。」
私はその合理性に従って交渉を進めましたが、時に「Too much!」と感じるほど冷徹でした。けれども確かに、その徹底が組織の信頼性を支え、社会全体の効率を保証していたのです。
厳格さの奥にある人間味
とはいえ、ドイツ人の厳しさは決して「人間味の欠如」ではありません。
私の妻はフラットの大家さん――特に奥様から、生活習慣や言葉の細かなことまで温かく教えられました。帰国後もドイツ語の手紙を交換し続けたのは、彼女の人柄に惹かれたからです。
ドイツ人は「社会規範」を揺るがせにしませんが、その枠組みの中で他者を深く支える温かさを持っています。
読者へのメッセージ
ドイツで学んだのは、「ルールは誰かを縛るためのものではなく、皆が安心して暮らすためにある」という哲学でした。
日本の子どもたちに伝えたいのは、「自由とは好き勝手することではない」ということです。周囲を思いやり、ルールを守ることでこそ、社会全体の信頼が生まれます。
教育の現場でも同じです。子どもたちにルールを押し付けるのではなく、「なぜ必要か」を一緒に考え、共有すること。そこにこそ、未来の共生社会を築く力が育まれるのだと思います。
コチラも是非読んでみてください⬇
「世界で学ぶ、文化を越えて働く」ブラジル編①
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コパカバーナの白い砂浜と、盗人の良心――“共存共栄”という静かな哲学
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