精神保健福祉の視座から考える、ギフティッド支援の新たな可能性

こんにちは。ギフティッド国際教育研究センター(GIERI)代表の石川大貴です。

先日、GIERIのギフテッド支援のさらなる向上のため、東京都立精神保健福祉センターで開催された「精神疾患の理解と対応」についての基礎研修を受講してまいりました。講師は、東京都立精神保健福祉センター 所長 石黒雅浩先生。

一見すると、精神疾患の医療的・福祉的アプローチは、ギフティッド(2Eを含む)教育や支援とは異なる領域に見えるかもしれません。しかし、本研修で語られた支援の根底にある哲学は、私たちが日々向き合っているギフティッドの才能育成と困難さの解消に、驚くほど深く通ずるものでした。

今回は、この研修から得た大きな学びを、ギフティッド支援の文脈に紐づけて皆さまに共有したいと思います。

1. 「リカバリー志向」と「ストレングス視点」の共鳴

研修の中で特に強調されていたのが、「リカバリー」「ストレングス」という二つの概念です。リカバリーとは、単に病気が治ることを指すのではなく、困難を抱えながらも自尊心を持ち、その人らしい人生を再構築していくプロセスを意味します。また、ストレングス視点とは、問題点や欠点ではなく、その人が本来持っている能力、長所、持ち味、そして夢や希望に着目するアプローチです。

これはまさに、私たちがギフティッド支援において最重要視している姿勢です。ギフティッドの子どもたちは、非同期発達(知的な発達と精神的・身体的発達のアンバランス)や過度激動(OE)により、学校や社会で生きづらさを感じることが少なくありません。彼らの「できないこと」を適応させるのではなく、彼らの突出した「才能(ストレングス)」を信じ、本人が望む独自の人生のゴール(リカバリー)に向けて協働していくこと。支援者には、彼らの可能性を信じ、希望を伝達する能力が求められていると改めて実感しました。

2. 環境調整の重要性:ストレス脆弱性モデルの応用

精神疾患の発症や再燃には、生まれ持った生物学的な脆弱性(調子の崩しやすさ)と、環境因子(ストレス)の双方が関与するという「ストレス脆弱性モデル」が解説されました。

ギフティッドの特性も、これと似た構造で捉えることができます。彼らの高い感受性や鋭敏な感覚(素因)そのものが問題なのではなく、それを取り巻く環境(退屈な授業、理解されない対人関係、過剰な感覚刺激など)とのミスマッチが強いストレスとなり、不適応やメンタルヘルスの不調として表出するのです。

個人に対して「もっと鈍感になりなさい」と要求するのではなく、ストレスとなる環境因子をどう減らし、彼らの特性がポジティブに発揮される環境をどう調整するか。多面的な視点と多職種でのアプローチが必要不可欠です。


3. 「非現実的」な願望の背後にある価値観を尊重する

精神保健福祉の現場では、当事者が「有名歌手になりたい」といった一見「非現実的(高望み)」な目標を語ることがあり、支援者は再発のリスクを恐れて妥当な目標へ修正を図ろうとしがちだといいます。しかし、その背後にある「ご本人が大事にしている価値意識」に気づき、正面から受け止めて協働することが、関係構築に大きく役立つという指摘は非常に示唆に富んでいました。

ギフティッドの子どもたちも、同年代とはかけ離れた壮大なビジョンや、大人から見れば達成不可能なほどの完璧主義を抱くことがよくあります。「それは無理だよ」と現実を突きつけるのではなく、その高い理想の根底にある「知的好奇心」や「社会を良くしたいという正義感」に寄り添うこと。その価値観を尊重した上で、今できる具体的なステップを一緒にデザインしていくことが、真の信頼関係を築く鍵となります。


4. 危機を未然に防ぐ「クライシスプラン」の有効性

最後に、状態が安定しているときに、不調のサインと自己対処法、周囲へのSOSの出し方をあらかじめ決めておく「クライシスプラン」の紹介がありました。

ギフティッドは、思考の回転が速すぎるあまり、一度ネガティブなループに入ると急激にエネルギーを消耗してしまうことがあります。彼らが精神的に安定している「調子の良い時」に、「どんなことが重なるとイライラしやすいか」「睡眠が何時間以下になると危険か」「限界を感じた時に、誰に、どうやって助けを求めるか」を一緒に言語化し、プランとして共有しておくこと。これは、パニックやメルトダウンを未然に防ぎ、彼ら自身のセルフマネジメント能力(自己理解)を高めるための強力なツールになると確信しています。
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今回の研修を通じて、医療・福祉の現場で培われた「人間尊重」のまなざしは、ギフティッドという稀有な才能を持つ人々を支援する上でも、強力な羅針盤になることを学びました。

GIERIでは、これからもこうした最新の知見や多様な分野からの学びを統合し、ギフティッドの方々がその素晴らしい才能を遺憾なく発揮し、心豊かに生きていける社会の実現に向けて、質の高い支援を提供していきたい。




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