カナダのニューロダイバシティー教育① 1.ニューロ(脳・神経)ダイバーシティ(多様性)とは?

 1.ニューロ(脳・神経)ダイバーシティ(多様性)とは?

カナダで行われている教育の考え方の基盤となっているのが、ニューロダイバーシティです。これは、オーストラリアの社会学者ジュディ・シンガーが1990年代に提唱したもので、脳や神経と、それによる個人の多様性を表しています。

 

自閉症スペクトラムや注意欠陥多動障害(ADHD)、学習障害(LD)などの発達障害は神経学的には「違い・特性」に過ぎないと捉え、特定の能力が欠如している意味を含む「障害」ではなく、あくまで人間の遺伝子の自然な個体同士の違いによる「特性」であるという考え方です。

カナダの小中学校では、日本で言われる発達障害の子どもだけでなく、例えば車椅子で生活する子も、視覚障害や聴覚障害を持つ子も同じ教室で学びます。 

現地で出会った学習障害を持つ子は、「アコモデーション」といって教師がその生徒の興味や能力の範囲に応じて、他の生徒とは違う課題が出されていました。

日本では、それは時に特別扱いだったり、差別のように捉えられかねませんが、他の生徒に、そのことについてどう思うか尋ねたところ「その子にとって必要な勉強をしていて、私たちには私たちの課題があるからそれでいい」というような返事が返ってきました。

「アコモデーション」を受けている本人も、そうでない生徒も、みんなが自分にとって必要な学習をしている、という考えが浸透していて、それがごく当たり前の光景となっているのです。 

このように、一人ひとりの興味や能力に応じて学習を進めていくカナダの教育に欠かせないのが、エデュケーション・アシスタント(EA)の存在です。障害の重度によって、一人の生徒に一人の担当がついたり、数名に一人ついたりします。

これについても、カナダの子どもたちは幼少期から、人それぞれに合った課題や支援があるということが当り前の環境なので、EAがついている子どもがなにか特別視されるということもありません。

このEAのサポートおかげで、学級担任は教科ごとの授業やクラス全体のことに集中できるというメリットもあります。 

こういった環境で育った子ども達は、自然とニューロダイバーシティの概念が身についていきます。それについて教えることができる大人も身近に存在し、将来自分もEAという職業を目指したいというひとつの選択肢にもなってきます。


以下の記事も参考にしてみてください。

カナダのニューロダイバシティー教育②
とにかく褒められて育つカナダの子どもたち
https://gieri-jp.blogspot.com/2025/02/blog-post_20.html


カナダのニューロダイバシティー教育③
カナダの雄大な自然の中で、次世代を担うための人間力が養われる
https://gieri-jp.blogspot.com/2025/02/blog-post_21.html


カナダのニューロダイバシティー教育④ 発達検査は必要ない?
https://gieri-jp.blogspot.com/2025/02/blog-post_23.html


カナダのニューロダイバシティー教育⑤
学校教育との関わり 敵対ではなく「チーム」
https://gieri-jp.blogspot.com/2025/02/blog-post_24.html


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