見えにくい困難と「分断化」の壁を越えて:ギフティッド・2E支援における当事者主体のあり方

こんにちは。ギフティッド国際教育研究センター(GIERI)代表の石川大貴です。

先日、東京大学医学部附属病院精神神経科教授の笠井清登氏による「若者・女性への相談支援」に関する精神保健福祉研修の資料を読み解く機会がありました。


笠井先生とはもう5年以上前になるのですが、「思春期学」の研究会(新学術領域共創言語進化×思春期主体価値 合同若手研究会)に参加させていただいたご縁があったこともあり、資料のお名前を拝見し、懐かしく思いました。 さて、一見すると、若者や女性、ヤングケアラーのメンタルヘルスを中心とした研修内容なのですが、そこで語られていた「障害の社会モデル」や「支援の分断化」といった課題は、私たちGIERIが日々向き合っているギフティッドや2E(Twice-Exceptional:特異な才能と発達の困難を併せ持つ)の子どもたちを取り巻く環境と深く重なるものでした。 研究や学びの場ではしばしば言われる、むしろ常識であるべきことなのですが、まだまだ社会には広く、特に教育分野には全く普及していない内容だと日々の相談を受けると痛感します。


今回は、この研修から得た学びを、ギフティッド・2E専門家の視点から考察してみたいと思います。


1. 多数派向けにデザインされた社会との「ミスマッチ」

研修では、困難を個人の問題とする「医学モデル」ではなく、多数派向けに作られた社会構造と個人の特性とのミスマッチによってディスアビリティ(障害)が生じるという「社会モデル」の視点が強調されていました。

これはまさに、2Eの子どもたちが学校社会で直面している壁そのものです。彼らの非同期的な発達(ある分野では極めて高い能力を示す一方で、別の分野では年齢不相応な困難を抱える状態)は、同質性を重んじ、多数派向けにデザインされた一斉授業のシステムと強烈なミスマッチを起こします。本人の努力不足ではなく、環境との不適合が彼らの「見えにくい困難」を増大させているという構造的な理解が不可欠です。

2. 「分断化」された支援構造と、親の「伝書鳩」化

研修の中で最もハッとさせられたのは、22q11.2欠失症候群のように身体・知的・精神の障害が重複する方々が、単一の障害向けに縦割り化(コンパートメント化)された現代の医療・教育・福祉システムからこぼれ落ちてしまうという「分断化」の指摘です。

2Eのケースでも、この「分断化」は深刻です。才能教育(ギフティッド支援)と特別支援教育(発達障害支援)が縦割りになっているため、「才能を伸ばす場所」では困難への配慮が足りず、「困難を支援する場所」では知的好奇心が満たされないという事態が頻発します。研修資料にあったように、受け入れ先が見つからず、親が各機関をつなぐソーシャルワーカーや「伝書鳩」のような役割を強いられ、疲弊していく構図は、2E家庭でも全く同じように起きています。

3. トラウマ・インフォームド・ケアと「価値」の尊重

また、他者には些細な出来事であっても当事者にとってはトラウマになり得ることを自覚する「トラウマ・インフォームド・ケア(TIC)」の重要性も語られました。2Eの子どもたちは、その特性ゆえに周囲から誤解されたり、仲間からいじめを受けたりして、小児期にトラウマを抱えるケースが少なくありません。

人の長期的な人生の行動は、無自覚な部分も含めた「価値」によって駆動されており、その価値は思春期に社会との相互作用を通じて形成されます。彼らが社会に対してSOSを出せなくなる前に、当事者と支援者の価値観が異なることを前提に関係を築く「Values-informed care (VIC)」の姿勢を持つことが、真の才能開花と心理的安全性につながります。

結びに:TICPOCの理念を2E支援へ

研修の最後に提唱されていた行動目標「TICPOC(トラウマの存在に気づき、当事者中心の共創を意識し、組織文化を変革する)」は、これからの教育現場全体に必要な理念です。


GIERIでは、才能と困難という二面性を持つ2Eの子どもたちが、縦割りの支援制度の狭間で苦しむことなく、その子らしい価値を主体的に育んでいけるよう、引き続き社会モデルに基づく環境調整と情報発信に努めてまいります。

私たちの活動や詳細なサービスについては、GIERI公式HP(https://gieri-jp.com/)、ならびに運営元のflussStein公式HP(https://www.flussstein.com/)をご覧ください。多様な個性が真にインクルードされる社会を目指し、これからも共に歩んでいきましょう。





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