ギフティッド・2Eの子どもと「スマホ依存」〜久里浜医療センターと松沢病院、2つのアプローチから見えてくるもの〜

こんにちは。ギフティッド国際教育研究センターの石川です。 ギフティッドや2E(Twice-Exceptional)の子どもたちは、高い知性を持つ一方で、学校生活や対人関係に強いストレスを抱えやすく、デジタルの世界に深くのめり込んでしまうケースが少なくありません。 GIERIの相談でもゲーム障害・ネット依存の悩みを抱えている親御さんは非常に多いです。そのため、私も国内で初めてインターネットやゲーム依存症の専門外来を設けた久里浜医療センター(三原聡子先生)の研修(2025,2026)でさまざまな学びを得て、支援に役立ててきました。 今年は、精神科医療の基幹・拠点である東京都立松沢病院(稲熊徳也先生)の研修を受けたところ、考え方の相違を感じました。

今回は、日本の依存症治療を牽引する2つの医療機関――久里浜医療センター(三原聡子先生)と、東京都立松沢病院(稲熊徳也先生)――のアプローチの「違い」から、特性を持つ子どもたちへの適切な支援のあり方を紐解いていきたいと思います。



■「脳の病理」か、「表面化したSOS」か


ネット・ゲーム依存治療のパイオニアである久里浜医療センターのアプローチは、依存を「中脳報酬系の神経順応」といった脳の病理(疾患)として捉える傾向があります。ゲーム等の強い刺激によって脳が変化してコントロールを失うという医学的視点から、スクリーンタイムの制限など、物理的な時間の枠組みや防御要因の構築に重きを置いています。


一方、東京都立松沢病院のアプローチでは、目に見えるスマホ依存は「氷山の一角」に過ぎないと考えます。ADHDやASDなどの発達特性、孤独感、自信のなさ、学校生活や友人関係の悩みといった背景があり、スマホ依存はそれらの苦痛から生じた「二次的なSOS」であると捉えているのです。


■「快楽の追求」か、「感情の調節」か

久里浜医療センターが「快楽(ドーパミン)への依存と耐性」に注目するのに対し、松沢病院の資料では、スマホの使用を「手軽な感情調節手段」として紐解いています。


使用するアプリによって、結びつく心理的特徴も異なると指摘します。

  • ゲームに没頭する: 落ち込みや自信のなさを紛らわすため。(うつ)

  • 動画を見続ける: 考えなくてよい受動的刺激によって、不安を鎮めるため。

  • SNSにのめり込む: 繋がりを求め、孤独を和らげるため。

つまり、「どのアプリを取り上げるべきか」ではなく、「この子は今、どの感情を調節しようとしてスマホに向かっているのか」を理解することが支援の出発点となります。


■「取り上げる(制限)」か、「共同作業」か

久里浜式のアプローチがデバイスから距離を置く(制限する)ことを治療の軸の1つとするのに対し、松沢病院は「スマホやWi-Fiを取り上げても状況が良くなる子は少ない」と明確に述べます。


むしろ、一方的に取り上げることで親子関係が悪化し、暴力に発展するリスクすらあると。


将来スマホを持たずに生活することは不可能なため、子どもを縛るのではなく、自分でコントロールする力を育てるための「共同作業」としてルールを決めていくことが推奨されています。

■ ギフティッド・2E支援の専門家として

2つのアプローチの差異を踏まえると、GIERIが目指す支援の形がより明確になります。

私たちが向き合うギフティッド・2Eの子どもたちの多くは、強い知的好奇心と同時に、社会とのミスマッチによる深い「生きづらさ」を抱えています。


彼らのデバイスを無理やり取り上げることは、唯一の「自己治療の松葉杖」を奪うことになりかねません。

本当に必要なのは、彼らがスマホに逃げ込まざるを得ない「学校・家庭生活のつらさ」を減らすこと。そして、Fireside Adventuresのようなカナダの大自然での野外体験プログラムを通じ、リアルな世界に「別の強烈な没頭(フロー)」と「ありのままでいられる安心できる居場所」を創り出すことです。

スマホ依存の奥にある小さなSOSに気づき、リアルな世界を彼らにとって生きやすい場所へと変えていく。それこそが、ニューロダイバーシティの特性を持つ若者たちに対する、本質的な支援だと信じています。





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