【パナマ編】銃弾とワイン、そして金貨5枚の「貸し借り」―AI時代に「人間力」が最強の武器になる理由

 「パン! パン! パン!」

乾いた破裂音が、ホテルの窓ガラスを震わせました。 1989年、中米パナマ。独裁者ノリエガ将軍に対するクーデターが発生した瞬間です。

当時、私は国内大手電機メーカーのトラブルシューティング(問題解決)のために現地に滞在していました。 「大使館に連絡すれば大丈夫だろう」。そんな甘い見込みは、電話線の不通と共に吹き飛びました。 ホテルの外は市街戦。ソニーの駐在員らと共にロビーに3人だけ取り残され、私は完全に「詰んだ」と思いました。

その時です。 砂煙を上げて、一台のいかついジープがホテルの前に乗り付けました。

命を救ったのは「契約書」ではなかった

ジープから降りてきたのは、現地の販売代理店の社長でした。 彼はノリエガ派の有力者。「トガノ! 乗れ!」 私を押し込むと、彼はジープを急発進させました。検問所では兵士が彼に敬礼し、道を開けます。そのまま空港まで直行し、私は間一髪でブラジル行きの飛行機に乗ることができました。

なぜ、彼はリスクを冒して私を助けに来たのでしょうか? ビジネス上の「貸し」があったから? いいえ。 彼との間に、契約書以上の特別な取引があったわけではありません。

理由があるとしたら、それは「ワイン」です。 滞在中、私は彼と毎晩のようにワインを飲み交わしていました。仕事の話はそこそこに、日本の歴史、パナマの誇り、互いの家族のこと……。 「こいつとは波長が合うな(フィーリング)」 理屈を超えた直感で、私たちは友人になっていたのです。

別れ際、彼は私にパナマの記念金貨を5枚手渡してくれました。 (日本に帰って1枚10万円ですぐ売ってしまいましたが、今思えば取っておくべきでした…笑)


「直感」という名の生存戦略

この経験で私は骨の髄まで理解しました。 平時には「マニュアル」や「組織」があなたを守ってくれるでしょう。 しかし、有事の際――ルールが崩壊し、銃弾が飛び交うような極限状況であなたを守るのは、あなたという人間を好きでいてくれる誰か」だけです。

「貸し借り」の損得勘定で作った人間関係は、危機の前では脆く崩れ去ります。 しかし、「こいつと飲む酒は美味い」という直感で結ばれた関係は、銃弾をもすり抜ける最強のセーフティネットになるのです。


【現代の親御さん・先生方へ】

お子さんに「愛される力」を教えていますか?

これからの時代、AIが発達し、事務処理や論理的思考の多くは機械が担うようになるでしょう。 そんな未来で、人間が最後に頼れる武器は何でしょうか。

それは偏差値でも、プログラミングスキルでもありません。 「君のためなら、ひと肌脱ごう」と思わせる人間的魅力(愛嬌)です。

異文化や新しい環境で孤立しないために必要なのは、英語力以上に「一緒にご飯を食べて笑い合える力」です。 どうか、お子さんが友達と無駄話をして笑っている時間を、「遊んでばかりいないで」と叱らないであげてください。その「無駄」に見える時間こそが、将来、彼らの命を守る「金貨」になるかもしれないのですから。





コチラも是非読んでみてください⬇

『世界で学ぶ、異文化を越えて働く』⑩パナマ編:
銃弾とワイン、そして金貨5枚の「貸し借り」―AI時代に「人間力」が最強の武器になる理由

『世界で学ぶ、異文化を越えて働く』⑨ガーナ編:
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『世界で学ぶ、異文化を越えて働く』 ⑧イギリス編:
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「世界で学ぶ、文化を越えて働く」ブラジル編①
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