『世界で学ぶ、異文化を越えて働く』 ⑨【ガーナ編】「10人に1人が消える教室」で、53歳の新人が配った「魔法の粉」の話

「もし、クラスの友だちが10人いたら、そのうちの1人は、5歳の誕生日を迎えられない」

あなたは、自分のお子さんにこの現実をどう伝えますか? 遠い国の話ではありません。世界には、生まれた場所が違うというだけで、「生きること」が奇跡になってしまう子どもたちがいます。

ビジネスの最前線で数字を追い続けてきた私が、53歳にして直面した「命の数字」。 それは、利益や株価よりも遥かに重く、そして変えることのできる数字でした。 


「ビジネスで成功し、数字を作る」。 

それが私の人生のすべてだと思っていました。50歳になるまでは。

ある日、ふと鏡を見たとき、そこに映る自分に問いかけたのです。「お前の人生、これで上がりか?」と。 私の脳裏に浮かんだのは、晩年のオードリー・ヘップバーンでした。華やかな銀幕を去り、ユニセフ親善大使としてアフリカの大地で子供たちを抱きしめる彼女の姿。

「これだ」

私は2008年、53歳にして「新人」に戻りました。 国連系NGOの職員として、西アフリカ・ガーナの土を踏んだのです。


1袋1ドルの「命の粉」

現地で突きつけられた現実は、想像を絶するものでした。 私が担当した貧困地域では、乳幼児の死亡率が出生1,000人あたり97人、つまり約10人に1人が5歳まで生きられないという惨状でした。原因の大半は、単純な栄養失調です。

ビジネスマンとしての私は、ここで「Make Simple(単純明快に)」の思考を発動させました。 複雑な医療支援も大事ですが、まずは「食べさせること」が先決です。

目をつけたのは、現地でタダ同然に生えている芋、「キャッサバ」でした。 日本の技術(味の素)と組み、キャッサバを加工して栄養価の高い離乳食パウダーを作る工場を建設しました。製造コストは1袋1ドル。現地の物価ではそれでも高価ですが、これを私たちは無償で配り続けました。同時に、診療所を作り、学校を建て、銀行まで作りました。

数年後、その地域の乳幼児死亡率は、その結果、1,000人あたり36人にまで劇的に改善しました。これは単なる数字の変化ではありません。失われるはずだった60人以上の小さな命が、毎年救われるようになったのです。 

ビジネスの規模で言えば、数千億円を動かした過去に比べれば小さな額です。しかし、子供たちの「生きる確率」をひっくり返したこの仕事は、私の人生で最も美しい「黒字」だったと確信しています。

水と好奇心、そして入院

……と、美談だけで終わればいいのですが、そうはいきません(笑)。 ここでも私の悪い癖、「好奇心」が顔を出しました。

井戸掘りの最中、現地の人たちが飲んでいる水を、私も飲みたくなったのです。「30種類もワクチンを打っている俺なら大丈夫だろう」という慢心がありました。 結果は惨敗。強烈な下痢と高熱に襲われ、現地の国立病院に一週間入院する羽目になりました。

ベッドの上で天井を見上げながら、私は学びました。 「現地に溶け込む」ことと、「無謀」は違う。しかし、その泥臭い失敗があったからこそ、現地の村長さんやスタッフたちが、私を「よそ者の支援者」ではなく「仲間」として受け入れてくれたのかもしれません。

【現代の親御さん・先生方へ】

「支援」とは、上から与えることではありません。

ガーナでの経験から学んだのは、「相手が何に困っているか、同じ目線で聞く」ことの重要性です。 一方的に井戸を掘って「使え」と言っても、彼らは使いません。彼らの生活のリズム、文化、誇りを理解し、「一緒に」解決策を作る。それが本当の自立支援です。

これは、日本の子育てや教育でも同じではないでしょうか。 親や教師が「良かれと思って」先回りして答えを与えることは、子供の自立を奪うことになりかねません。

「あなたはどうしたい?」「何が困っている?」 まずは子供の隣に座り、同じ水を飲む(※お腹を壊さない程度に!)覚悟で、耳を傾けてみてください。そこからしか、本当の信頼関係は生まれないのです。



コチラも是非読んでみてください⬇

『世界で学ぶ、異文化を越えて働く』⑨ガーナ編:
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「世界で学ぶ、文化を越えて働く」ブラジル編①
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