「パーソナリティ」をどう捉えるか?—最新の精神医学から見る『個性』と『障害』の境界線(研修参加報告)
はじめに
令和6年、東京都中部総合精神保健福祉センター主催の研修「パーソナリティ症(障害)の基本的理解と実際の対応」に参加してまいりました
今回の研修では、パーソナリティ障害(以下、PD)の概念が近年「大刷新」されていること
私たちGIERIが日々向き合っている「ギフティッド」や「発達特性」を持つ子どもたちの支援にも通じる重要な視点がありましたので、GIERIならではの考察を交えてご報告します。
1. 「病気の分類」から「特性の度合い」へ(ディメンショナル・モデル)
最も大きな学びは、診断のパラダイムシフトです。
これまでPDといえば、「境界性」「自己愛性」といった『タイプ(カテゴリー)』に当てはめる診断が主流でした
林先生は、PDの定義について以下の2点を強調されていました。
パーソナリティ機能の減損(自分らしさの維持や、他者との共感・親密さに問題がある)
病的パーソナリティ特性(否定的感情や、脱抑制、対立などの傾向が強い
つまり、「性格が偏っている=障害」ではなく、「その特性によって生きづらさ(機能障害)が生じているか」が焦点となるのです。
2. 発達障害・トラウマとの深い重なり
私たちにとって特に重要だったのは、「精神障害は重層する(重なる)」という視点です
特に印象的だったのは、「PDは発達障害の二次障害」とも捉えられるという視点です
3. 「自分を取り戻す」ための支援アプローチ
治療や支援の原則は、「共同作業」であり、本人が「自分を取り戻す」学びの体験を重ねることだとされています
具体的な支援技法として紹介された「弁証法的行動療法(DBT)」や「メンタライゼーション」の考え方は、家庭や教育現場でも応用可能です
マインドフルネス: 感情に飲み込まれず、現実的で冷静な自己観察を行う技能
。 Bonding(絆)とStructure(構造): 支援者は、本人の訴えを傾聴・共感(Bonding)しつつも、関係性や行動のルール(Structure)を明確に保つこと
。
「共感はするが、同意する必要はない」
【GIERIの視点】「特性」を「才能」として開花させるために
今回の研修を通じて改めて感じたのは、「特性そのものに良い悪いのラベルを貼らない」ことの重要性です。
ギフティッドの子どもたちは、しばしば「過度激動(Overexcitability)」と呼ばれる激しい感情や、強いこだわりを持っています。これらは、従来の医学モデルで見れば「感情調節障害」や「固執」といったPDのリスク因子に見えるかもしれません。
しかし、ディメンショナル・モデルの視点に立てば、それは「スペクトラム(連続体)上の強い個性」です。 重要なのは、その強烈な個性を「治療して消す」ことではありません。その特性を持ちながらも、社会生活で破綻しないための「機能(スキル)」を身につけることです。
林先生が「特性を土台として個性を発展させるという発想は(PDも発達障害も)共に適用可能」
自己理解の深化: 自分の「激しさ」や「敏感さ」を否定せず、自分の特性として理解する(マインドフルネス的アプローチ)。
スキルの獲得: 感情の波を乗りこなす具体的な技術や、対人関係のスキルを学ぶ。
環境調整: その「特性」が「障害」とならず、「才能」として発揮できる環境を整える。
精神医学の最新知見は、人間の「個性」をより解像度高く理解する方向へ進んでいます。私たちもその知見を取り入れながら、一人ひとりの「ギフテッドネス」が輝く支援を目指してまいります。
参考文献: 林 直樹 (2024). 『パーソナリティ症(障害)の基本的理解と実際の対応』. 精神保健福祉研修(前期)講義資料.
【参加報告】「普通」を目指さない支援へ。発達障害とギフティッド教育の交差点
【研修報告】「トラウマインフォームドケア(TIC)」を学ぶ:ギフティッド支援の現場から
.png)
コメント
コメントを投稿