パーソナリティ症研修(2026年夏)からの新たな学び:2E支援における「家族のケア」と「変化のステージ」

こんにちは。ギフティッド国際教育研究センター(GIERI)です。

先日、西ヶ原病院の林直樹先生を講師にお迎えした「パーソナリティ症(障害)の基本的理解と実際の対応」に関する精神保健福祉研修(2026年度前期)に今年も参加してまいりました。


昨年ブログでは、診断が「タイプ分類」から「ディメンション(次元)」へと移行している点や、ギフティッドの過度激動(OE)を「治療して消す」のではなく「特性のグラデーション」として捉えることの重要性についてお伝えしました。



今回の研修では、本人が行き詰った際の「変化のステージ(動機付け)」と「支える側のサポート・介入」というより、周囲の環境やプロセスのに踏み込んだ内容が強調されていましたので、この新たな2つの視点を中心に、ギフティッド・2E支援への応用について紐解いていきたいと思います。


1. 当事者が変わらない理由:「変化のステージ」を見極める


支援や教育の現場で、「本人の行動がなかなか変わらない」「支援を拒否される」という壁にぶつかることは少なくありません。 研修では、Prochaska & Diclementeの「変化のステージ」モデルが紹介されました。人は行動を変える際、

「熟考前 ⇒ 熟考 ⇒ 準備 ⇒ 行動 ⇒ 持続」というプロセスを辿ります

2E(二重に特異な)の子どもたちが、学校生活や対人関係で行き詰まり、強い不適応(ひきこもりや問題行動など)を起こしているとき、大人は焦って「行動」や「準備」の段階を求めがちです。

しかし、本人がまだ問題を自覚していない「熟考前」の段階にいる場合、実質的な治療や対策は機能しません。 研修資料でも「前半のステージでは、対応はできるが治療はできない。動機づけが焦点となる」と指摘されていました。

2E支援においても、まずは本人の苦悩や世界観を否定せずに共有し、「このままでは生きづらいかもしれない」という自己観察(セルフモニタリング)を促すための「動機づけ」から丁寧に始める必要があります。


2. 家族の労苦に寄り添い、「境界線」を引くサポート


今回の研修で非常に大きなウエイトを占めていたのが、患者を支える家族の疲弊とそのサポートです。 パーソナリティ症(PD)の当事者を抱える家族は、感情的な巻き込まれ、社会的スティグマ、将来への不安などから、家族自身の精神的健康が損なわれている(気分障害や不安障害が疑われるレベル)ケースが非常に多いことがデータで示されています。

これは、2Eの子どもを育てるご家庭にも深く通じる課題です。

一般的な育児の枠に収まらない特異なニーズや激しい感情の波に対し、保護者は孤立し、疲労困憊してしまうことが多々あります。

研修では、家族介入の実際として以下のポイントが挙げられました

  • 心理教育による不安の軽減


  • 「境界(境い目、限界)」をはっきりさせること


  • 無理のない、常識的なペースでの援助(つかず離れず)


親が子どもの特性にすべてを合わせ、巻き込まれすぎるのではなく、家族としての限界(境界)を設定し、「自分自身の人生のコントロールを取り戻す」ことが、結果的に本人を安定させる基盤となります。

GIERIとしても、子ども本人への教育的アプローチだけでなく、保護者の方々が安心して息継ぎをし、適切な境界線を引くための「家族支援」の重要性を改めて痛感しました。


3. 行動の裏にある心を読む「メンタライゼーション」


前回も紹介された「弁証法的行動療法(DBT)」に加え、今回は「メンタライゼーション療法(MBT)」も紹介されました。これは、すべての人間の行動の裏には「思考、感情、欲求」といった心の動きがあることを確認し合うアプローチです。「なぜそんなことをするのか」と行動だけを責めるのではなく、「知らない(not knowing)」という前提から相手の気持ちの動きを推測し、言葉にしていくトレーニングです

知性が極めて高い一方で、感情コントロールや社会的コミュニケーションに凸凹を抱える2Eの子どもたちにとって、「自分の行動が、どんな感情から生まれたものか」「他者はどう感じているか」を言語化してすり合わせるメンタライゼーションの作業は、社会と接続するための強力な架け橋になるはずです。

おわりに


精神疾患も、ギフティッド・2Eの特性も、決して本人だけの問題ではなく、それを取り巻く環境・家族との相互作用の中で形作られます。「ディメンション(連続体)」として個性を捉えつつ、本人への動機づけと家族へのケアを両輪で進めていくこと。それが、特性を「才能」へと昇華させる道筋なのだと、今回の研修を通じて確信しました。

GIERIはこれからも、最新の医学的知見を教育と支援の現場に還元し続けてまいります。


【参加研修・参照資料に関する情報】

  • 研修名: 2026年度 精神保健福祉研修(前期) 「パーソナリティ症(障害)の基本的理解と実際の対応」

  • 開催日時: 2026年8月6日 13:30〜16:30

  • 主催: 東京都中部総合精神保健福祉センター

  • 講師: 林直樹 氏(西ヶ原病院)

  • 参照資料: 【配布用資料】パーソナリティ症 精神保健福祉研修20260806





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