【第6回】150本のリストカット。極限状態の娘と自責する母を救う「トリアージ」
ベッドのマットにまで血が滴る光景を前に、お母様は頭が真っ白になりました。
中学2年生の娘、リナさん(仮名)の手にはカミソリが握られ、腕には短い期間で150本を超えるリストカットの痕がありました。
「この子の問題は私の責任だ」。 仕事と育児を両立してきたお母様は自分を激しく責め、糸が切れたように途方に暮れてGIERIにご相談に来られました。
「異常なし」という診断が親を追い詰める
リナさんは小学6年生の時に友人関係のトラブルから不登校になり、昼夜逆転の生活を送っていました。 過去に精神科で知能検査(WISC)を受けたものの、結果は「異常無し」。昼夜逆転を改善するための薬を処方されるだけで、カウンセラーからも「リストカットは甘く見ない方がいい。衝動的に死を選ぶ10代は危ない」と警告されるのみでした。
「危ないのは分かっている。でも、具体的にどう接すれば出口が見えるのか教えてほしい」。 既存の医療や支援の壁にぶつかり、ご家庭は完全に孤立していました。
自傷行為は「怠慢」ではなく「防衛本能」
リストカットが発覚した日、お母様は内職の提出期限を守らなかったリナさんを「先方がいる仕事、しっかり約束は守るべき」と叱っていました。定型的な子育ての観点では「正論」です。
しかし、リナさんが自傷行為に及んだ理由は誰かのせいではなく、「自分自身の内側から湧き上がる癇癪やイライラを抑え込むため」でした。 「異常なし」と片付けられた彼女の脳内には、極めて高い知性と過度な感受性(OE)、そして完璧主義が渦巻いています。
感情のコントロールが追いつかず、「こんな性格で嫌だ」という自己嫌悪に押し潰されそうになる痛みを、物理的な痛みで必死に相殺(コーピング)していたのです。SNSで同じような境遇の子と情報を交換し、承認欲求を満たすことで辛うじて自己を保っている状態でした。
「正しい子育て」を一旦すべて手放す
私たちは、事態のトリアージ(緊急避難)として、お母様に「今は教育をすべて手放してください」と強くお伝えしました。
自殺対策の基礎知識については以下の記事もご参考にして下さい。
「「才能」の前に、守るべきものがある―ギフテッド・2Eの子どもが発する「命のサイン」を見逃さないために」
※本記事は、GIERIに寄せられた複数の実際の相談事例を基に再構成しています。ご相談者様のプライバシーを厳重に保護するため、お名前や具体的な状況などは一部変更しておりますが、記載されている「お母様の生の声」や「課題の構造」はすべて事実に基づいています。
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