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10月, 2025の投稿を表示しています

才能が翼を広げる場所:JALスカイ実習体験記✈️

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 GIERI(ギフティッド国際教育研究センター)では、特性を活かした社会経験の機会として、様々な企業様との実習プログラムを実施しています。今回は、空の玄関口である JALスカイ様 にご協力いただき、3日間にわたる実習を行いました。 実習生がどのように自身の特性と向き合い、職業体験を通じて成長のきっかけを掴んだのか、振り返りの面談記録からその様子をご紹介します。 緊張から楽しさへ:国際線と国内線での多様な業務体験 実習は、初日の 国際線ターミナル 、そして2日目・3日目の 国内線ターミナル で、多岐にわたる業務を体験させていただきました。 体験した業務は、以下の3つのカテゴリーに分けられます。 手先を使う軽作業 (備品作成、ビニール袋折り、ラミネートカットなど) PCを使った事務作業 (数字の転記、データ入力など) 外での作業 (備品補充、会議室清掃、拠点間の移動など) 特に印象的だったのは、実習生が「 手先が器用 」であるという国際線からの引継ぎ評価です。ビニール袋の折り方や、ハサミを使った作業において、丁寧さや正確さが評価されました。 国際線オフィスは、現場の音が聞こえる賑やかな環境。当初は戸惑いも予想されましたが、実習生からは「 苦手じゃなかった 」「 やってみたらそんなに気にならなくて、BGMのように流れていった 」という前向きな感想が聞かれました。 評価された「応用力」と「質問力」:PC作業での光る才能 国内線での PCを使った数字の転記作業 では、実習生の持つ高い能力が発揮されました。 担当の方からは、「マニュアル外の領収書に対しても、教えた基本を応用し、 自分で考えて 作業を進めることができた」と、その 応用力・思考力 が高く評価されました。加えて、「わからないことは しっかり質問できた 」点も、プロの仕事への向き合い方として称賛されました。 また、会議室の清掃では、清掃用具の使い方をしっかり確認し、 丁寧に 作業を実施するなど、一つ一つの業務に真摯に取り組む姿勢が見られました。 疲れよりも楽しさが勝る!ローテーション勤務への適性 3日間の実習は、国際線と国内線、そしてPC作業、軽作業、外回り作業と、 業務のローテーション が非常に多く、体力的にも精神的にも大きな変化がありました。 実習後、「帰ってからドッと疲れがきた」と話した実習生でしたが、「...

「東大卒なのに、なぜ…」元政策秘書の嘆きが暴く、日本のエリート教育の致命的な欠陥

先日、私が民主党の議員秘書として駆け出しだった頃に大変お世話になった大先輩と、久しぶりに食事をする機会がありました。長年、政策秘書・秘書官として他党も含め政策立案の中枢を担い、霞が関の官僚たちと日々渡り合ってきた、私が最も尊敬する人物の一人です。 昔話に花が咲く中、私がギフテッド教育の必要性について語る中で、ふと先輩から問いかけられた一言が、私の心に深く突き刺さった。 「私は秘書を何十年とやってきたけど、永田町や霞が関で、東大出のエリート官僚を一度も『頭がいい』と思ったことが全くない」 それどころか「馬鹿だとしか思ったことがない」と話した上で、そうでないなら、戦略的に「馬鹿を演じている」のだと思うと話した。 日本の頭脳の頂点であり、最難関の試験を突破してきたはずの彼ら。その彼らが、なぜ政治の最前線で戦ってきたプロの目には「頭がいい」と映らないのか。その言葉の裏には、単なる個人の能力批判ではない、日本の社会システムが抱える根深く、そして極めて重要な問題が隠されていると考えられる。 「正解を出す天才」が「答えのない問題」に直面したとき 先輩が言うには、野党からの厳しい質問や、前例のない課題に直面したとき、多くのキャリア官僚は驚くほど機能不全に陥るというのです。 「彼らは用意された答弁書を読むのはうまい。でも、少し角度を変えた質問をすると、途端に『確認します』『分かりません』を繰り返す。むしろ、同じ部署に何十年もいるノンキャリアの課長の方が、よほど話が通じるし、問題の本質を理解している」 これは一体、何を意味するのか。 それは、日本の「メリトクラシー(能力主義)」が、 “ペーパーテストで高得点を取る能力”という、たった一つの物差しでエリートを選抜してきたことの限界 を示しています。 東大入試や国家公務員試験は、膨大な知識を記憶し、複雑な問題を論理的に解析し、決められた時間内に「唯一の正解」を導き出す能力を測るものです。この競争を勝ち抜いてきた彼らは、間違いなく「正解を探す」ことの天才です。 しかし、私たちが直面する現実の社会課題——少子高齢化、経済の再生、国際関係の再構築——に、 「唯一の正解」など存在するでしょうか? 先輩との会話で見えてきたのは、 「正解を出す能力」は極めて高い一方で、「正解のない問いを立て、多様な人々と対話し、全く新しい答えを創造する能力」が決定的に...

ギフテッドの事例:限界に近づいた母

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以前 「ギフテッド育児の現実:親と教師が知っておきたい5つの物語」 を投稿したところ、事例の分析とどのようなサポートが望まれるかについてのご質問をいただきました。 5つの事例に沿って、解説をしてみたいと存じます。実際の個別の事例については様々な要因が複雑にからみあっていますので、必ずしもご自身のお子様にあてはまるわけではありません。お子様の最適な才能を伸ばす際の参考にしてみてください。 限界に近づいた母・美香さん 美香さんの息子(小学3年)さんは、学校での成績はとても優秀です。しかし、苦手な漢字練習になると机を震わせ、紙を破り、泣き叫びます。 漢字テストもそれなりの点数をとるので、学校に相談しても「個性ですね」と軽く流れ、周囲に話しても「贅沢な悩み」と言われるばかり。   ある晩、ついに 「もうやめて!、いい加減にして!」と大声で怒鳴ってしまった自分に、強い罪悪感と涙がこぼれました。 翌朝 、息子が笑顔で「ママ、昨日の続きしようや」って言ったとき、美香さんは彼を抱き締めながら、二人に合った道を探そうと思いました 。   専門的分析 美香さんの状況は caregiver burnout(介護者燃え尽き症候群) の兆候を示しています。ギフテッド児の育児は特有の困難があり、周囲の理解不足がさらなるストレスを生んでいます。息子の行動は 非同期発達(Asynchronous development) の典型で、認知的能力と情緒的・運動的発達のギャップが学習困難を引き起こしています。 保護者・教育者へのアドバイス 即座に必要なサポート: 専門機関への相談 :発達支援センター、教育相談所での包括的アセスメント 学習方法の個別化 :視覚的・体感覚的学習法の導入(砂文字、粘土での文字作り等) 感情調整スキルの教授 :息子への怒りのコントロール方法教育 母親自身のケア: ペアレント・サポートグループ :同じような困難を抱える保護者との交流 レスパイトケア :一時的に子育てから離れる時間の確保 専門カウンセリング :ギフテッド児育児に理解のあるカウンセラーとの面談 長期的支援体制: 学校との継続的連携 :特別支援教育の枠組みでの支援検討 マルチモーダル学習の導入 :複数の感覚を使った学習法の開発 家族全体のウェルビーイング :家族療...

世界で学ぶ、異文化を越えて働く⑤スペイン編 非言語のコミュニケーションと誇り

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 いま、子どもたちに必要なのは「英語」よりも、 多様な価値観を受けとめる力──つまり「異文化のまなざし」です。 本連載では、国際ビジネス、教育、地域開発などの現場で40年以上にわたり、 五大陸・88か国を実地に歩いてきたGIERIの国際教育アドバイザー・栂野久登(とがのひさと)氏が、現場で肌で感じ、対話し、乗り越えてきた「文化を越えて働く」リアルな知見を語ります。 単なる“海外体験”ではありません。 言葉・習慣・価値観のズレに直面しながら、どう人と関係を築き、 どう「違い」を教育やビジネスの力に変えてきたか── スペインの街角で出会ったのは、 「自分の文化を誇る力」でした。 カタルーニャの人々は、言語も、芸術も、祭りも、 小さな子どもにまで誇りをもって語り継ぎます。 「自分は何者か」を胸を張って言えること。 それは、グローバル社会を生きる上での最強の土台です。 あなたのお子さんは、 「自分の大切なもの」を語れていますか? #異文化教育 #スペイン体験 #カタルーニャ文化 #子育てのヒント #自己肯定感を育てる #世界で学ぶ #国際教育 #親子で学ぶ #文化の誇り #教育エッセイ スペイン――非言語のコミュニケーションと誇り スペインは、私にとって「沈黙が雄弁である」ことを教えてくれた国でした。 言葉で語るよりも、表情や身振り、沈黙そのものに意味を込める。その非言語的な豊かさに触れるたび、日本的な「察し」とも似て非なる世界に驚かされました。 交渉の場での沈黙 あるとき、バルセロナの代理店との交渉で、私が数字を並べて合理的な提案をした後、彼らはしばし沈黙しました。私は焦って言葉を継ぎ足しましたが、彼らはただじっとこちらを見つめている。 やがて一人がゆっくりと口を開きました。 「あなたの言うことは理解した。だが、それが我々の“誇り”にどう関わるのか?」 その瞬間、私は悟りました。彼らにとって契約とは、単なる数字の取り引きではなく、自分たちの存在意義を尊重してもらえるかどうかの証だったのです。沈黙は「考えている」のサインであり、同時に「こちらの本音を見せろ」という圧力でもありました。 サグラダ・ファミリアが語るもの バルセロナの街を歩くと、未完の大聖堂サグラダ・ファミリアがそびえ立っています。何十年、何百年かかろうとも「完成」を信じて積み上げ続ける...