弁証法的行動療法について、わかりやすく、具体的に教えて?
前回のパーソナリティ症に関わるBlog「パーソナリティ症研修(2026年夏)からの新たな学び:2E支援における「家族のケア」と「変化のステージ」」を公開したところ、「弁証法的行動療法」についての質問がありました。
私自身も林先生の研修を受ける中で知ったものですので、その療法の実践者でも専門家でもありませんが、わかりやすく、研修の資料や学びからまとめさせていただきました。
是非参考にしてください。
弁証法的行動療法(DBT)は、激しい感情の波や衝動的な行動をコントロールし、より良い人生を送るためのスキルを学ぶ認知行動療法の一つです。Linehanらによって開発され、主に以下の4つの具体的な技能(スキル)を訓練するものです。
4つの基本スキルと具体例
■マインドフルネス(現実的で冷静な自己観察・現実認識の技能)
内容: 湧き上がる感情や判断に捉われることなく、今起きている事象をありのままに見て受け入れる(アクセプタンスする)スキルです。
具体例: 怒りを感じた時、「ダメだ」と否定したり相手にぶつけたりせず、「私は今、怒りを感じている」と客観的に実況中継するように観察します。腹式呼吸などの身体技法や瞑想もここに含まれます。
内容: 危機的な状況や強い苦痛をすぐに解決できない時に、衝動的な行動で事態を悪化させることなく、その状況を安全にやり過ごすスキルです。
具体例: パニックになりそうな時に氷を握りしめて感覚を逸らしたり、行動を起こす前に「60秒ルール」を用いて立ち止まって考えたりすることで、自傷行為などを防ぎます。
内容: 感情の波を穏やかにし、極端な気分の変動に振り回されないようにするスキルです。
具体例: 睡眠や食事を整えて感情の土台を安定させることや、強い悲しみがある時にあえて外に出て散歩するなど、感情と反対の行動をとって気分を切り替える練習をします。
■役に立つ対人関係技能(対人関係の有効性)
内容: 自分の自尊心を保ちながら、他者と良好な関係を築き、自分の要求や断りを適切に伝えるスキルです。
具体例: 相手を攻撃したり自分を過度に卑下したりせず、「私はこうしてほしい」と冷静に要望を伝えたり、罪悪感を持たずに「NO」と断ったりするコミュニケーションの練習を行います。
治療の目標と進め方
弁証法的行動療法(DBT)は医療機関等の専門機関で受けるもですか?それとも家庭で実践するものですか?
弁証法的行動療法(DBT)は、本来は医療機関や専門機関で提供される専門的な心理療法ですが、そこで学ぶ「スキル」自体はご家庭での日常的な実践が不可欠なものです。
医療機関・専門機関での受講(本格的なプログラム)
実施機関: 精神科・心療内科のクリニック、大学病院、専門の心理カウンセリングセンターなどで提供されています。
日本の現状: Linehan(リネハン)が開発した本来のDBTは、「週2回の集団技能訓練と週1回の個人面接」から構成される非常に集中度の高い治療です。このフルパッケージを完全に実施している機関は国内ではまだ限られており、一部の専門病院やクリニックでの実施が中心です。
探し方: 「弁証法的行動療法(DBT) 実施 クリニック」等で検索し、DBTの専門トレーニングを受けた医師や公認心理師が在籍しているかを確認してください。
ご家庭での実践(エッセンスとスキルの応用)
親御さんが「治療者」としてフルパッケージのDBTを実施することはできませんが、DBTの基本技能をご家庭に取り入れることは非常に効果的であり、強く推奨されます。
家族自身がスキルを学ぶ: 今回の研修資料でも、ホフマンら(2007)による家族療法として、家族に対してDBTセッションを実施し、「マインドフルネス」や「苦しみに耐える」スキルを学んでもらうアプローチが紹介されています。
共通言語としての活用: 「60秒ルールで行動の前に立ち止まって考える」ことや、腹式呼吸で感情を落ち着かせる身体技法などは、家庭ですぐに実践できるスキルです。親御さんが先にこれらを学び、子どもがパニックになりそうな時に「一緒に深呼吸しよう」「今は60秒待とう」と声をかけることで、家庭内に安全な構造(Structure)を作ることができます。
書籍の活用: 一般向けのDBTワークブックや、研修でも紹介された家族向けの心理教育本(チャップマン&グラッツ『境界性パーソナリティ障害サバイバルガイド』など)を活用し、家庭内で少しずつ実践していくご家庭も増えています。
まずは親御さんご自身が関連書籍などを通じてDBTの「感情の波の乗りこなし方」を学び、ご家庭内のコミュニケーションの土台として少しずつ取り入れていく形をおすすめします。
おすすめの専門機関を教えてください。
残念ながら個別の機関を紹介することはできないのですが、ネット検索やAIを用いれば探すことは難しくありません。私が調べた限りでは、日本の現在の医療制度において、DBTのフルパッケージ(週2回の集団スキルトレーニング+週1回の個人面接+危機時の電話コーチングなど)を保険診療内で完備している病院は極めて限定的です。
通常の診察とは別に「自費のカウンセリング」としてDBTのスキルトレーニングを提供しているケースが多いため、受診を検討される際は、実施内容や料金体系(保険適用の有無)を各機関へ直接お問い合わせいただくことをお勧めします。
コチラも是非参考にしてください。
パーソナリティ症研修(2026年夏)からの新たな学び:2E支援における「家族のケア」と「変化のステージ」

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