投稿

【World Bound Japan 上越編 Vol.4】Z世代が「一期一会」に出会う日。久昌寺での座禅と茶道がもたらした究極のマインドフルネス

イメージ
大自然の中での自活 (Vol.1) 、地球規模の課題に ローカルで向き合う探究学習 (Vol.2) 。そして地域コミュニティとの熱狂的な融合 【Vol.3 融合と熱狂編】 を経て、Fireside AdventuresとGIERIが共同で企画実施する「World Bound Japan」上越編は、いよいよ最終章となる「精神性の探求」へと向かいます。 7月30日のテーマは、ズバリ「静寂とマインドフルネス」。  これまでのエネルギッシュなアクティビティとは打って変わり、日本の伝統的な精神文化を通じて「自己」と深く対話する1日となりました。デバイスフリー(スマホ断ち)の環境下で、Z世代の若者たちがどのように「今、この瞬間」を研ぎ澄ませていったのか。そのハイライトをお届けします。 🧘‍♂️ 午前9時:久昌寺での「座禅」ー 心を空にするグラウンディング 朝の静寂に包まれた由緒ある「久昌寺」。本堂に足を踏み入れた若者たちは、僧侶の指導のもと「座禅(Zazen)」に挑戦しました。 正しい座り方、深い呼吸法、そして「心を空(から)にする」という感覚。 情報過多で常に何かに接続されているデジタルネイティブ世代にとって、自分自身の呼吸のみに意識を集中させる時間は、完全に未知の体験です。 しかし、意図的なデバイスフリーの環境下で過ごしてきた彼らは、驚くほどの集中力を発揮し、この静かでグラウンディング(地に足をつける)された時間を深く味わっていました。「頭の中がクリアになった」「すでに心が落ち着く効果を感じている」と、彼ら自身もその内面的な変化に驚きの声を上げていました。 🥖 正午:環境と身体を労わる「ヴィーガンパン」のランチ 座禅で心を整えた後のランチタイムには、「ヴィーガンパン(Vegan bread)」をいただきました。参加者の中にはグルテンアレルギーの子どもがあり、配慮していただいた食事会です。 今回のプログラムを通して、気候変動や生態系の保護といったサステナビリティ(持続可能性)についても現場で深く学んできた参加者たち。動物性食品を使用しないヴィーガンという食の選択肢に触れることは、環境への配慮を「毎日の食事」という身近なアクションに落とし込む大切な体験です。静かな心で、食材そのものの味を噛み締める豊かな時間となりました。 今回の昼食では、地元の食材・新鮮な野菜も振る...

【World Bound Japan 上越編 Vol.3】融合と熱狂。私たちは「歴史」と「地域」の一部になった

イメージ
大自然の中での自活 (Vol.1) 、地球規模の課題にローカルで向き合う探究学習 (Vol.2) を経て、Fireside AdventuresとGIERIがお届けする「World Bound Japan」上越編。 今回のテーマは、地域コミュニティとの「完全な融合」です。 カナダ・アメリカからやってきた若者たちは、もはや単なる「旅行者」や「お客様」ではありません。彼らがどのように上越という街に深く溶け込み、確かな足跡を残して「歴史」と「地域」の一部となったのか。熱狂と感動の記録をお届けします。 🏛️ 30年後の未来へ。お寺の歴史に自分の名前を刻む 上越滞在の中で、若者たちにとって「一生の宝物」となる極めて特別な出来事がありました。由緒ある浄興寺(Jōkōji Temple)での文化体験です。 まず、参加者全員が自分自身の個性に合わせた「日本語の名前」を授かりました。そして、彼らが訪れたタイミングは、なんと 30年に一度行われるお寺の屋根の葺き替え の時期。 彼らは授かったばかりの自分の日本語名を、真新しい屋根板(Roof plate)に筆で力強く揮毫しました。この板は、これから30年間、お寺の屋根の一部として雨風をしのぎ、歴史と共に残り続けます。異国の地で自分の存在が「歴史の一部」になるという重みと喜びに、参加者たちの目は深く輝いていました。 ⚔️ 剣道体験と市長表敬訪問。堂々たる「地域の一員」として Day 10は、朝早くから地元の高校を訪問し、高校生から直接学ぶ「剣道体験」からスタートしました。武道の精神である「礼儀(Respect)」とルールを学び、高校生とマンツーマンで防具を着装。面や小手を打ち込み、防御の型を真剣に学びました。 その後は「レーザー・サムライ・バトル」にも挑戦し、チーム戦略と協調性を体感しました。上越市の議員さんがすすめている、体験型のゲームに誘われ参加。感想を述べ、今後のイベントでのアイディアを思い思い述べました。 さらに、若者たちは 上越市長への表敬訪問 という大舞台に臨みました。 市長からの質問に対し、彼らは上越での素晴らしい体験を自分の言葉で堂々と語っただけでなく、市長の求めに応じて「上越市をより良くするためのフィードバック」まで提案したのです。ただ体験を与えられるだけでなく、自分の意見を持ち、街づくりに貢献しようとする彼らの姿は、...

【World Bound Japan 上越編 Vol.2】地球規模の課題を「ローカル」で手当てする。Z世代の探究とサステナビリティ

イメージ
大自然の中で「自立」と「今この瞬間」を取り戻した Vol.1 に続き、Fireside AdventuresとGIERIがお届けする「World Bound Japan」上越編は、さらに深い学びのフェーズへと突入します。 今回のテーマは「探究学習」と「サステナビリティ(持続可能性)」。 気候変動や地方の過疎化といった「地球規模の課題(Global Issues)」を、教科書の中の遠い出来事としてではなく、新潟県・上越市という「ローカル(地域)」の現場でリアルな手触りとともに体感する。Z世代の若者たちが日本のリアルと向き合った、濃密な数日間の記録をお届けします。 🌊 海岸線から考える気候変動と、自発的なアクション ある日、直江津の街を抜け出し、自転車で美しい海岸線へと向かった参加者たち。海を前にして行われたのは、単なるレクリエーションではなく「生態系の繋がり」についてのディスカッションでした。 気候変動が上越の地元の漁業にどのような影響を与えているのか。そして、生態系の中で魚の数が減ると、どんな波及効果が起こるのか。 真剣な対話の最中、彼らは美しい砂浜に散乱するゴミに気づきました。話し合いで終わらせるのではなく、「今、自分たちにできることをしよう」と自発的にビーチクリーンナップを開始。全員で協力し、あっという間に大きなゴミ袋をいっぱいにしました。課題に対して即座にアクションを起こす、彼らのリーダーシップが光った瞬間でした。 🏡 限界集落で学ぶ「自己持続可能性(Self Sustainability)」と保全 雨の降るDay 7。一行は上越市の山間部にある「桑取川(Kuwadori-gawa)」周辺の小さな山村を訪問しました。 ここは人口減少が進み、ほぼ限界集落(nearly abandoned)となっている地域です。しかし、この村の存続のために熱い想いを持って活動している「上越後山里ファン倶楽部」という地域おこし組織に出会いました。 修復された伝統的な古民家(ローカルカフェ)のオーナーであり、組織のメンバーでもある方から直接プレゼンテーションを受けました。 なぜこの場所を保存するのか、地域コミュニティを維持するための「自己持続可能性」とは何か。大都市・東京では決して学ぶことのできない、日本の地方が抱える切実な課題と、そこに生きる人々の力強さに、若者たちは深く心を動...

【World Bound Japan 上越編 Vol.1】用意された環境を飛び出せ!Z世代が「自立」と「今この瞬間」を取り戻した奇跡の数日間

イメージ
大都市・東京の圧倒的な熱気から一転。カナダ・アメリカからの若者たちを乗せた新幹線は、豊かな自然に囲まれた新潟県・上越市へと滑り込みました。 Fireside AdventuresとGIERIが共同で実施するグローバル教育プログラム「World Bound Japan」。いよいよここから、プログラムの核心である「ローカル(地方)での実践的な学び」がスタートします。 便利で洗練された都市部から、日本の原風景が残る農村部へ。環境を大きく変えることで、若者たちの「非認知能力(リーダーシップ、自立心、コミュニケーション力)」は劇的なスピードで引き出されていきました。 「ここはホテルじゃない」ー 生活の中で培うリアルな自立心 上越での滞在拠点は、歴史ある建物を美しくリノベーションした「すずき旅館」。しかし、ここは全てがお膳立てされたオールインクルーシブのホテルではありません。 参加者たちは、決められた予算内で地元のスーパーで食材を選び、毎朝自分たちの手で健康的な朝食を作ります。最初は戸惑いを見せていた朝食作りも、数日経つ頃には「挑戦」から「当たり前の習慣(Habit)」へと変化していました。部屋の使い方、ゴミ捨て、トイレの使用、様々な文化的な違いにぶつかりながら学んでいきました。 さらに、溜まった衣類を抱えて地元のコインランドリーへも向かいます。引率スタッフからの指示は最小限。どの服を洗うべきか、どうやって洗濯機を回すのかを自分たちで考え、チームとして協力して生活タスクをこなす。この日々の小さな積み重ねが、彼らの「自立心(Independence)」と「責任感」を確かに育てていきます。 言葉がいらない交流 ー フィンランド発祥「モルック」で繋がる心 上越での大きなハイライトの一つが、地元の放課後デイサービス「また明日」の子どもたちとの交流です。 自己紹介で習いたての日本語を披露した後は、カナダ人スタッフの手作りゲームやフィンランド発祥のスポーツ「モルック」を実施し、チームビルディングゲームに挑戦しました。ここでスタッフは、あえて「ルールの翻訳」以外は介入しませんでした。 すると若者たちは、ジェスチャーや表情、そして声のトーンといった「非言語コミュニケーション」をフル活用し始めました。言葉の壁を越えてハイタッチを交わし、日本の手作りお弁当と、カナダのメープルシロップ&アイスクリー...

【東京編】Z世代が未来をデザインする旅。繋がりと変容を生み出す「World Bound Japan」

イメージ
 グローバル化とテクノロジーの進化が加速する現代において、次世代のリーダーに求められるスキルとは何でしょうか? Fireside AdventuresとGIERIが共同で企画実施しているグローバル教育プログラム「World Bound Japan 2026」。カナダ・アメリカからやってきた情熱あふれる若者たちが日本に到着し、いよいよ東京でのプログラムが幕を開けました! 単なる観光ではなく、「文化理解」「自立」「コミュニティとの繋がり」を掛け合わせた高解像度な体験デザインのもと、東京での数日間で早くも数多くの「成長と変容のストーリー」が生まれています。 💡 1. 「メガシティの熱気」と「深い学び」を繋ぐリフレクション 猛暑の東京。参加者たちは、明治神宮での伝統的な作法、渋谷スクランブル交差点の圧倒的なエネルギー、そしてチームラボ(teamLab)での最新テクノロジーアートを全身で吸収しました。 しかし、私たちのプログラムの最大の特徴は「体験して終わり」ではないことです。 毎日の終わりには必ず「リフレクション(振り返り)」の時間を設けています。その日感じた文化の違い、チームで動く難しさ、そして新しく学んだ日本語。言語の壁やカルチャーショックを自分の中で言語化し、仲間と共有することで、単なる「出来事」が「人生の生きた学び」へと昇華されていきます。 💡 2. 海を越えて見守る親御様たちとの「リアルタイムな繋がり」 この過酷な暑さと長旅の中、若者たちは互いに声を掛け合い、自立心を発揮しています。引率スタッフからの詳細な活動レポートや写真に対し、本国の親御様たちからもWhatsAppを通じて熱量の高いメッセージが次々と届いています。 「素晴らしいアップデートと写真をありがとう。長く忙しい1日の後に、ここまで時間をかけて丁寧に報告してくれることに心から感謝しています!」 「こんな素晴らしい体験をしている子どもたちが羨ましい!」 「みんな楽しそう!最高の1日になったみたいだね!」 離れていても、保護者の皆様とリアルタイムに繋がり、一緒に子どもたちの成長を見守る。この透明性と温かいコミュニティこそが、World Bound Japanの強みです。 💡 3. 広がるコミュニティ。駆けつけてくれた「過去の仲間たち」 今回の東京ツアーでは、プログラムの「広がり」を象徴する...

The Light and Shadow of Giftedness Seen Through the Movie Michael: The Resolve Required to Raise a Genius

イメージ
 I recently watched the biographical film Michael , which is currently in theaters. Starring Michael’s nephew, Jaafar Jackson, the film is truly captivating. Without relying on CGI or composite shots, Jaafar has perfectly mastered the moonwalk, the spins, and even Michael’s unique mannerisms. Watching his overwhelming performance, I couldn't help but feel a profound sense of "giftedness" running through their bloodline. However, when I watched it with members of GIERI (Gifted International Educational Research Institute), mostly in their 30s, their reviews were surprisingly divided. The reason lies in the narrative structure. The film concludes around the late 1980s during the "Bad World Tour" (when Michael was about 30), tracing back from his early childhood in the 1960s with the Jackson 5. For our members in their 30s, their primary image of Michael is heavily associated with the controversies and allegations that surfaced from the 1990s onward. They were expe...

才能の最大化か、子ども時代の保護か。マイケル・ジャクソンから考える教育のパラドックス

イメージ
こんにちは。ギフティッド国際教育研究センターの石川です。 現在公開中のマイケル・ジャクソンの伝記映画『Michael(原題)』を鑑賞しました。 主演を務めるのは、マイケルの甥であるジャファー・ジャクソン。CGや合成に頼ることなく、ムーンウォークやスピン、そしてマイケル特有の細かな癖(マナーリズム)までを見事に自分のものにしており、その圧倒的なパフォーマンスからは、まさに血筋という名の「ギフテッドネス」を感じずにはいられませんでした。 けれども、この映画を、私はGIERIの活動で鑑賞したのすが、サポートしてるメンバー(主に30代)からの評価はあまり高いものではなかった。 その理由は、物語の構成にあるのだろう。映画は「ジャクソン5」として活躍し始めた1960年代の幼少期から、1980年代後半の「Bad World Tour」(マイケルが30歳になる頃)までで幕を閉じます。 30代のメンバーにとってのマイケル・ジャクソンは、1990年代以降の疑惑や論争が表面化していた時代のイメージが強く、「その真相がどう描かれるのか」を期待していたため、最も輝かしい全盛期で終わる結末に少し肩透かしを食らったからのようです。 エンターテインメントとしては非常に良い終わり方だと思うのですが、確かに物足りなさもありました。 彼らの1人に、これこそ「まさしくギフティッドですね」と語りかけられましたが、その通り、間違いなのですが、私にとってこの映画は、まったく別の強烈なテーマを突きつけてくる非常に興味深いストーリーでした。 それは、 「父親」という存在 です。 才能と引き換えの「自立と衝突」 マイケルの父親、ジョー・ジャクソンの逸話は広く知られている。野心家で保守的な彼は、子どもたちを厳しく管理し、ショービジネスの世界で成功させるために過酷なレッスンを課しました。その常軌を逸したやり方は、しばしば「虐待」と評されます。 その「父親」が映画でどう描かれるかは、多くの人の興味の的だったはず。 劇中でも、ジョーの絶対的な管理下から始まり、やがて大人になったマイケルに自我が芽生え、父親から決別して独立していく「自立と衝突のプロセス」が重要な軸として描かれています。 心理の専門家から見れば、マイケルが抱えた深いトラウマや心の闇は、自立という言葉で簡単に片付けられるものではないでしょう。しかし同時に、「子ども...

「失敗しないエリート」が国を滅ぼし、才能を潰す。日本の教育に潜む残酷な連鎖

イメージ
 皆様、こんにちは。 GIERI(ギフティッド国際教育研究センター)代表の石川大貴です。 先日出版いたしましたGIERI監修の書籍『世界で学ぶ 異文化を超えて働く』(栂野久登 著)に対し、反響が寄せられています。 本日は、読者からいただいた2つの対照的なご感想と、著者の栂野が語った「ある事実」から、現在の日本の教育、そして国全体を覆う「才能を潰す病」の正体に迫りたい。

【活動報告】15年ぶりの映画館と就職祝い!「映画鑑賞」がひきこもり支援にもたらす意外な効果

イメージ
7月11日(土)、久々にメンバー全員が集まるアクティビティを実施しました。 GIERIでひきこもり支援を2024年にスタートしてから時間が経ち、最近ではそれぞれのメンバーが学校に通い始めたり、就職を果たしたりと、嬉しいことに次のステップへと進み始めています。 そのため、全員で集まれる機会が貴重になっているのですが、今回はメンバーからの提案で 「映画館での映画鑑賞」 と 「就職祝いの食事会」 を行いました。 実は今回の「映画館」というアイデア、支援者である私たちにとってはまさに「盲点」でした。 【専門的視点】なぜ映画館が「最高のコミュニケーション・リハビリ」になるのか アクティビティを企画する際、私たちはつい「どうやって交流させるか」を考えてしまいがちですが、メンバーから映画鑑賞の提案を受けたとき、思わず膝を打ちました。 不登校やひきこもりを経験し、対人不安やコミュニケーションに苦手意識を持つ方にとって、映画館は非常に優れた環境なのです。 言葉を交わす必要がない安心感: 上映中は「喋ってはいけない」という明確なルールがあるため、「何か話さなければ」というプレッシャーから完全に解放されます。 「暗闇」がもたらす視線の遮断: 対人不安の多くは「他者からの視線」に対する恐怖です。映画館の暗闇は他者の視線を遮り、スクリーンという同じ方向を全員で見るため、極めて安全でリラックスできる空間となります。 終了後の「共通の話題」の提供: 見終わった後は、無理に話題を探さなくても「あのシーン凄かったね」「あの音楽良かったね」と、自然に情動を共有することができます。 現在、AmazonプライムやNetflixなど家でコンテンツを楽しむ手段はいくらでもありますが、大きなスクリーンと音響、そして 「他者と同じ空間で一つの作品を共有する」 という独特の臨場感は、家では決して味わえません。 15年ぶりのポップコーンと『Michael』 今回鑑賞したのは、マイケル・ジャクソンの伝記映画 『Michael(マイケル)』 です。 参加メンバーが30代半ば以降ということもあり、誰もが知っているスーパースターの物語と、次々と流れる名曲の数々に、すっかり引き込まれていました。 中には「学生の時以来、15年ぶりに映画館に来た」というメンバーも。 両手にポップコーンとコーラを抱え、映画館ならではの体験を心...

「問題児」から「才能ある子」へ。担任交代で劇的に変わるギフテッド児のリアル〜先生という『環境』の絶大な影響力〜

イメージ
「うちの子が変わった」のではなく「環境が変わった」 「3年生の時は、学校の話をするだけでお葬式のように暗かったのに、4年生になったら毎日生き生きと通っています」 GIERI(ギフティッド国際教育研究センター)のコンサルティングには、毎年のクラス替えや担任交代の時期(春〜夏)にかけて、こうしたご報告が数多く寄せられます。 お子様自身の人格や能力が、たった数ヶ月で魔法のように変わったわけではありません。変わったのは 「担任の先生」 という、学校における 最大の『環境』 です。 極めて高い認知能力(言語理解や知覚推理など)を持つ一方で、生活面での実行機能(整理整頓や提出物などのルーティン)に弱さを持つギフテッドや2E(非同期発達)のお子様にとって、 「先生の指導スタイル」は、単なる相性の問題を超え、その子の学校生活のサバイバルを左右する決定的な要因 となります。 今回は、GIERIにご相談いただいた小学4年生の男の子のケーススタディを通じて、先生のアプローチがギフテッド児に与える影響の違いを批判的に分析します。 【事例】指導スタイルの違いによる「見立て」の逆転 知能検査(WISC)で非常に高い言語理解と知覚推理を示す一方で、「漢字の反復練習」や「提出物の管理」に強い抵抗と抜け落ちがあるヒカル君(小4)。 彼に対する、3年生時の担任と、4年生時の担任の評価とアプローチは、見事なまでに対照的でした。 ❌ 3年生の担任(管理・統制重視型)の場合 指導スタイル: 「決められたルールを、決められた通りに、期限内にこなすこと」に最高の価値を置く。 ヒカル君への見立て: 「知的な発言はするが、基本的な提出物を出さない、ルールを守れない困った子(=不真面目な子)」 結果:  ヒカル君は「どうせ僕なんかダメなんだ」と強いストレス反応を示し、学校への適応意欲を失いかけていました。 ⭕️ 4年生の担任(プロセス・対話重視型)の場合 指導スタイル: 正解を出すことよりも、「なぜそう考えたのか?」「どういう仕組みか?」という 思考のプロセス を重視するベテラン教員。 ヒカル君への見立て: 「物事の因果関係を深く早く捉える、極めて高い知的好奇心を持った子」 結果: 提出物が出せないことに対し、頭ごなしに叱るのではなく、「なぜ面倒くさいと感じるのかな?どうしたら戦えるかな?」と論理的...

障害者トライアル雇用の「落とし穴」。主観的評価と前日通告が許される制度のままで良いのか?

イメージ
障害者雇用において広く活用されている「障害者トライアル雇用制度」。 これは、障害のある方が原則3ヶ月間(精神障害者等の場合は最大6〜12ヶ月)、お試し期間として企業で働き、その間に適性や業務遂行の可能性を見極め、双方合意の上で常用雇用(本採用)への移行を目指す制度です。企業にとっても労働者にとっても、ミスマッチを防ぐための重要なステップとなっています。 しかし、就労支援や定着コンサルティングの最前線に立つと、現在の運用ルールが、必ずしも「働く障害者の心と生活」を守り切れていない現実に直面することがあります。 ■ ある若者のケース:満了直前の「本採用見送り」通告 先日、私が定着支援を担当している発達特性を持つ若者のケースです。彼は大手企業にて、6ヶ月間のトライアル雇用として勤務していました。半年間、一度も投げ出すことなく必死に業務に向き合い、目に見える成果も出していました。しかし、最終的に企業は「本採用見送り」の決断を下しました。 問題は、その「通告のタイミング」でした。企業側から「契約満了となる月末で終了とする」と通達があったのは、なんと期間満了のわずか数日前だったのです。 管轄のハローワークに確認を入れたところ、「トライアル雇用の期間満了による終了の場合、制度上、前日や当日の通告であっても法的な問題(罰則)はない」とのことでした。ただ、担当者は 「とはいえ、大手企業であれば、本人の生活や今後のことへの配慮として、1ヶ月前に書面で通知することが望ましい」 とも苦言を呈していました。当日・前日の告知でトラブルもよく起きているとも話されました。 ■ 企業側のジレンマ:「1ヶ月前通告」の難しさと親心 もちろん、企業側の事情も深く理解できます。 もし「あと1ヶ月でトライアル終了(不採用)です」と事前に伝えてしまった場合、本人のモチベーションが著しく低下し、残りの1ヶ月間をトラブルなく継続して働けるのか、現場が不安を抱くのは当然のことです。 また、「ギリギリまで成長を見守り、なんとか本採用のチャンスを与えたい」という現場の恩情や期待があるからこそ、最終的なジャッジが満了日直前までずれ込んでしまうケースも多いはずです。 しかし、発達特性を持つ方々にとって、「急な予定の変更」や「突然の環境の喪失」は、私たちが想像する以上のパニックと深い絶望をもたらします。罰則がないからといって、...